日本を代表する大企業の集まりで、「財界総本山」と形容されてきた日本経済団体連合会(経団連)が岐路に立っている。会員企業による事務方への不満が表面化しているほか、民主党政権下で政治との距離は遠ざかるばかり。来年5月に任期切れを迎える御手洗冨士夫会長の後任人事も混沌としており、財界不要論に拍車がかかっている。

不信感招いた20億円の巨額損失

経団連会館(東京・千代田区)
(撮影・前田せいめい)

 経団連は2009年4月上旬、「円高の急激な進行で、総額20億円の有価証券評価損を出した」と発表した。2006年夏以降、経団連の総務本部が複数の証券会社からユーロ円債や外国債を組み込み為替レートの連動で価値が変動する投資信託を順次購入。金融資産97億円のうち約40億円を投資したが、円高の影響などで今年3月末の価値が20億円に半減したという。

 経団連が資産運用で億単位の損失を出すのは初めて。御手洗冨士夫会長は多額の損失を招いた管理責任を明確化するため、中村芳夫事務総長ら役員3人の報酬を4月から3カ月間、30~10%の減額処分にした。

 関係者によると、経団連の運用担当者は2008年12月の時点で大幅な評価損が出ているのを察知していた。しかし、「いずれ為替レートは円安に戻るだろう」と楽観視して対策を全く講じなかった。

 「経団連の余裕資金は預金や国債など元本割れの可能性が少ない安全資産で運用するのが慣行だったはず」「いつ、だれが方針変更を指示して高リスクの金融商品を購入するようになったのか」と疑問を呈する向きは少なくない。

 しかも、事務方はこの損失話を記者発表まで伏せ、15人いる副会長には事前に一言も相談がなかったのだ。事後に説明に訪れた担当者は理由を質した某副会長に「これは不祥事ではありませんから」と言い放った。その副会長は「余剰資金はもともと我々が支払った会費ではないかっ」と一喝したそうだ。