日本の機械工業が生き残れるか、生き残れないか、これはひとえに中国と上手くやっていけるかどうかにかかっていると思う。
「BRICs」、つまりブラジル、ロシア、インド、チャイナ(中国)の4カ国が今後伸びていくだろうと言われているが、中国以外の3カ国について言えば、市場としてはものすごく大きくなるとは思うが、技術で日本に対抗することは多分ないだろう。
なぜかと言えば、「明日食べるものがない人が山ほどいる国で、民主主義をベースに産業発展を図るのは非常に難しい」からだ。
民主主義では意見をまとめるのに時間がかかる
人間の考え方は本当に様々だ。特にこの頃、実感させられることが多い。世の中には、誰がどう見たってその人にとって不利だろうという選択をする人たちがたくさんいる。しかし、不利益を被る当人が選択しているのだから仕方がない。
インドのタタ自動車は、世界的に話題を呼んだ低価格車「ナノ」を、コルコタの近くの新工場で製造する予定だったが、「工場は環境を破壊する」と短絡的に考える人がいて、住民の反対運動に阻止されて、プネなどの既存工場での生産に切り替えざるを得なかった。世の中にはいろいろな人たちがいるから、民主的に意見をまとめていくのは時間がかかる。
その点、中国は意見をまとめることが容易だ。
中国は共産党の国だ。党員数は7400万人というから、総人口13億人(本当は15億だと言う人もいる)の5.6%強に当たる。しかし13億人の中には赤ちゃんもいるし、引退した年寄りもいるから、実際の労働人口に対しては7%以上になるだろう。
また、農村部(約9億人と言われる)は共産党員の比率が低いので、都市部の労働人口に占める共産党員の比率は10%を超えるだろう(しかも党員候補が多数いる)。都市部で、10%の、しかも指導的な地位にいる人たちが1つの指令で動けば大変な力になるだろう。
「私は栄えある中国共産党員です」
「中国共産党は腐敗していて、その権威を失っている」と言う人がいるが、必ずしもそうとは言えないと思う。
私の所属する政策研究大学院大学には、中国からの留学生が毎年10人ぐらいやって来る。私は留学生が来ると、必ず「君は共産党員か?」と訊くのだが、彼らは胸を張って「私は栄えある中国共産党員です」と大きな声で言う。
他の質問に対する返事とは、明らかに声の調子が異なっている。なぜ大きな声になるのかと考えると、たぶん隣の中国人に「俺は共産党員なんだ。俺は選ばれた人間なんだ」と聞かせているのではないかと思う。
彼らは共産党員であることに誇りを持っているような気がする。確かに共産党員になるのはなかなか難しいらしい。もっとも政策研究大学院大学の学生は大部分が中国政府か、国営機関の職員だから、ほとんど共産党員である(共産党員でなければ、出世は覚束ないとのこと)。