ところで、麻生の「こだわり」とは?

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歴代首相にはこだわりが・・・(参考写真)〔AFPBB News〕

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 ところで、麻生が厚労省分割に「こだわっていない」と発言したことに対し、はてこの人は「一体、何にこだわっているのだろうか」と疑問を感じた。是非はともかく、郵政民営化に執念を燃やした小泉純一郎。憲法改正や教育改革に執着した安倍晋三。この2人の元首相に比べ、麻生は指導者として何を打ち出してきたのか。掲げる「旗」は何なのか。

 「麻生首相にはビジョンがない。ビジョンがないからマニフェスト(政権公約)もつくれない。だから首相からいつまでも指示が下りてこない」。ある自民党幹部のぼやきを思い出した。麻生がこだわっているのは、政権維持と延命だけ。そう思わざるを得ない。

 厚労省分割断念に関し、自民党の幹部は「麻生のオウンゴール。自民党内の空気が読めなかった」と指摘した。中堅議員は「党首討論では民主党代表の鳩山由紀夫に『小沢問題』で攻勢をかけていたのに、またまた『思いつき』でしゃべる悪い癖が出た」と言葉の軽さを批判する。

 定額給付金支給や郵政民営化見直しをめぐり、「迷走」を続けた麻生発言を思い返した議員は少なくないだろう。再び同じようなことが起これば、「麻生政権では選挙を戦えない」という声が自民党内に強まるのは必至だ。

 次期衆院選は、「麻生VS小沢」の党首対決から「麻生VS鳩山」に変わった。今のところ選挙前に自民党総裁が交代する可能性はほとんどないが、決してゼロではない。麻生が再びブレまくり、支持率下落で衆院解散を打てなければ、「総裁選前倒し論」が浮上する可能性はある。政界は一寸先は闇、「まさかの坂」はあり得る。

 その試金石の1つが、7月12日投開票の東京都議選になる。もし、衆院選と都議選のダブル選挙でなければ、都議選は衆院選の前哨戦に位置付けられ、ここで自民、公明の与党が惨敗すれば麻生政権への打撃は大きい。

 都内の無党派層が雪崩を打って与党批判票を民主党に投じた場合、政局が一気に流動化する可能性もある。「都議選で与党が過半数を割るようなことはないだろうが、(万が一にも)過半数割れになれば、麻生政権だって危ない」と公明党中堅議員は語る。

麻生VS鳩山、第1ラウンドは「五分五分」

首相周辺、「衆院選は8月以降」野党第一党を率いる名門政治家、民主党新代表の鳩山由紀夫氏

党首討論、初対決は互角に(参考写真) 〔AFPBB News

 5月27日の麻生VS鳩山の党首討論は、どちらに軍配が上がったのか。その判断は難しい。麻生としては、「どちらが首相にふさわしいか」との世論調査で鳩山に負けているだけに、ここで政権担当能力をアピールしてライバルを打ち負かそうと臨んだものの、顕著な差をつけられなかった。

 民主党代表代行・小沢一郎の秘書が起訴された西松建設の違法献金事件を、麻生は集中的に取り上げた。執拗なボディブローは鳩山に少なからぬダメージを与えたと自己採点したのではないか。

 しかし全体的に見て、それほど鳩山の印象は悪くはない。鳩山は「官僚任せ」の麻生政権を徹底批判し、党首討論後は「私の主張は分かっていただけたと思う」と満足感を示した。双方に得失点があり、客観的に採点すれば第1ラウンドは五分五分だろう。

 ところで筆者は党首討論を国会で「ライブ観戦」した。テレビで見るのと現場で取材するのとでは、臨場感が全く違う。

 ところが、現場はすさまじい与野党議員からのヤジと怒号の嵐。討論の大事な部分が聞き取れない。

 「抽象論だ。具体的に政策を語れ」「麻生はいつから裁判官になったんだ」「意味不明。何言ってるか分からないぞ」「民主党のどこが新しい顔だ」「とにかく年金やれー」・・・。

 とにかく、うるさくて聞こえない。現場にいた国会議員も議員会館に戻り、ビデオで党首討論を聞き直していたほど。さすがに、自民、民主両党の国対委員長間でヤジは自制しようということになった。果たして次期衆院選が迫る中、これから与野党議員は冷静に党首討論を傍聴できるだろうか。それは無理な注文かもしれない。