日本有数の高級ホテルのスイートルーム。大きな窓から、ぎっしりと立ち並ぶ東京のビル群が足元に見下ろせる。東京タワーもまるでミニチュア模型のように小さく見える。
その部屋で私は、ジェームス・スキナーさんに「どうもすみませんでした」と謝った。
ジェームスさんは戦略家であり、経営コンサルタントであり、実業家であり、成功哲学の伝道者である。今までに2つの投資ファンドグループを設立し、30以上の会社を経営した。そして、自ら体得した成功哲学を「成功の9ステップ」として確立し、セミナーや著作などを通して多くの人に提供している。セミナーの受講者は1万人以上に上るという。
現在はシンガポールに拠点を構え、日本に滞在している時は高級ホテルのスイートルームで生活する。手っとり早く言ってしまえば、絵に描いたような「大金持ち」である。
東北で過ごした極貧生活の日々
今から30年近く前、ジェームスさんは19歳の時にアメリカから日本にやって来た。東北地方を転々とし、ボランティア活動に励んだ。
当時の日本での生活は、今のジェームスさんの姿からは想像もつかないほど貧しいものだったという。1カ月の生活費は家賃と光熱費込みでたったの5万円。にわとりの餌の麦を調理したり、現金問屋で格安の食材を調達して食いつなぐという極貧生活だったそうだ。
そんなジェームスさんが、今やシンガポールで優雅に暮らし、ファーストクラスで飛行機に乗り、ホテルのスイートルームに泊まる生活を送っている。一体、どうすればそんなに裕福になれるのか。
ジェームスさんの著作『お金の科学』には、その秘訣が綴られている。副題には「大金持ちになる唯一の方法」とある。なんだ、要するに金儲けの本か、と思うだろう。実は、私も最初はそう思った。
「金持ちになりたい」人が読むのだろうが、誰でも簡単にお金を稼げる方法なんてあるわけがない。そもそも世の中はカネがすべてなのか。自分だけ金持ちになればいいのか。いやな本に違いない。
だが、そんな本ではなかった。私は大金持ちのメンタリティーは分からないし、成功へのステップも知らない。けれども、読み終えて思った。ジェームスさんの言っていることは、おそらく「正しい」。