100年に1度の経済危機の中、新型インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)までもが発生、日本も世界も踏んだり蹴ったりだ。先々週、カナダのトロントから帰国した際、空港での検疫にどうにかつかまらないで帰ってこられたのは幸いだった。米国のワシントンとトロントを回ってきたのだが、カナダ国内でも感染者が多く出始めた頃だったからだ。

官僚の減点主義がさせる過剰な対策?

新型インフル、大阪・兵庫で4043校が休校 感染者は163人

過剰すぎる日本の対応?
兵庫と大阪では5月19日、4043校が休校となった〔AFPBB News

 それに比べて日本のインフルエンザ対策は、少し過剰ではないだろうか。ウォーニングステージ(警戒水準)が「フェーズ4」になった後、世界保健機関(WHO)はたった1日で「フェーズ5」にするかどうかの検討を始め、真夜中の12時には発表するという状況だったから、対策は万全にしたいという気持ちは分かる。

  しかし、その同じ頃ウイルスの遺伝子が解読され始めて、強毒性の遺伝子を欠いているという話が既に出始めていた。

 強毒性のバードフル(鳥インフルエンザ)なら、世界的なパンデミックを起こすと日本でも何十万人が死ぬだろうと予想されているが、今度の豚インフルエンザは、それほどでもなさそうなことが見え始めていたのだ。

 テレビのニュースであれだけ時間を割いて、マスクをした市民の姿を繰り返し放送しているが、本当に必要なのだろうか。政府は、何かあったらいけないと躍起になっているが、これは一種の官僚の減点主義のように見える。社会、世間も危機管理になると、過剰に反応してしまうところもある。

 東京のある大学では、キャンパスの門全部と校舎全部の入口に、熱がある人は入構するな、というポスターが掲示されているらしいし、別の大学では、教室で熱のある人を自己申告させ、講義中にもかかわらず、その場で帰宅させたということだ。これは少しやり過ぎだろう。

 政府がパニックになって過剰反応しては、国民生活に悪い影響を及ぼす。もっと実態を直視してきちんと分析したうえで、それに適した対応を取るべきだ。そもそも、こうしたパンデミック騒ぎは、政治の道具に使われてきたという歴史もある。政府の判断に、その可能性は材料としてあったのだろうか。

23年前にも豚インフルエンザは流行していた

 ご存じない方のために時計の針を23年ほど過去に戻そう。場所は米国、フォード大統領の時代である。