
2006年、93歳で亡くなったフォード元米大統領〔AFPBB News〕
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1976年、実は米国で豚インフルエンザが発生していた。この時、死者が26人出たのだが、そのうち25人がワクチンの副作用による死で、インフルエンザによって直接死に至ったのはわずか1人だけだった。
ところが、フォード大統領はこの豚インフルエンザ騒ぎに “過剰反応” した。1億3500万ドルを投じて国民全体に予防接種をさせたのである。当時、再選を目指していたフォード大統領が、国民の支持を得るために豚インフルエンザを利用したのは明らかだった。
しかし、豚インフルエンザ騒ぎは数週間で収まり、フォード大統領はせっかくの大金を投じたものの再選を果たすことができなかった。
メキシコでは3月頃から既に感染が始まっていた?
今回の豚インフルエンザ騒ぎが、この時のような政治の道具として使われている可能性は完全には否定できない。ブッシュ大統領が国民の人気を得るためにイラク戦争を利用したように、政治家にとっては豚インフルエンザも国民の人気を取るには良い材料に映る。
今度の豚インフルエンザの騒ぎは4月のゴールデンウイークの最中に始まったように報道されているが、実際はメキシコでは3月頃から感染が始まっていたのではないかと言われている。現地の医療機関等の状況を考えると無理もない事情もある。
その時は「新型」だという情報もなければ、患者数の集計もなかった。4月に入って特別に体の弱い患者以外、多くの患者は治ってしまっていた可能性もある。
4月の終わりと言えば、ちょうどオバマ政権発足100日目に当たる。「ハネムーン期間」という言葉があるように、新大統領は世界中から好意に満ちた目で見られる時期がそろそろ終わりを告げる時期だ。
既に終わりかけていた豚インフルエンザの流行を、オバマ大統領が政治イベントとして利用しようという意図があった可能性もあるだろうか。この辺りは、様々な情報を集めてちゃんと見極めないといけないだろうが、対策やデータの収集などは早かったと言える。
もし、流行が終わりかけているインフルエンザに集中的な対策を打てば、国民経済的なマイナスが大きいからだ。人の移動を制限すれば世界経済に影響が甚大だし、ワクチンの製造の問題だってある。このような決断には政治的に難しい要素がいくつもある。