ついに、民主党の小沢一郎代表が辞任を表明した。党内にホッとした空気が流れたのも束の間、同党は激しい権力闘争に入った。後継は鳩山由紀夫幹事長か、あるいは岡田克也副代表か。当の小沢は辞任後も影響力を温存し、「院政」実現に意欲満々だ。(敬称略)

 なぜ小沢はこのタイミングで辞任したのか。

民主党・小沢代表が辞任を表明

辞任表明、狙いは「院政」か〔AFPBB News

 第1に、世論の大多数が代表続投を許さなかったからである。第2には、西松建設の違法献金事件で小沢の公設秘書が政治資金規正法違反罪で起訴されても、「政治とカネ」をめぐり説明責任を果たせないからである。いや、小沢は説明したくもないのだ。

 そして最大の理由は、ここで辞任すれば党内になお影響力を残し、民主党の「闇将軍」として「院政」を敷くことができると政治的に判断したからである。小沢の意中の後継代表は、最後まで小沢に忠誠を尽くした鳩山にほかならない。

世論7割、小沢続投「納得しない」

 代表選の見通しは後で触れるとして、まず小沢辞任の背景について、さらに詳細に分析したい。

 「次期衆院選での必勝と、政権交代の実現に向け、挙党一致の態勢をより強固にするために、あえてこの身を投げ打ち、民主党代表の職を辞することを決意した」。5月11日の記者会見で、小沢は辞任理由をこう説明した。

 キーワードは、「衆院選必勝」「政権交代」「挙党一致」の3つ。裏返せば、小沢が代表を続投すれば、民主党は挙党一致できず、次期衆院選で敗北し、政権交代も実現できないことになる。

 小沢が代表ポストに居座り続ける間、麻生内閣の支持率はじわじわと回復した。一時は10%台に落ち込んでいたが、最近は30%前後にまで上昇し、麻生太郎首相は衆院解散のフリーハンドを握れるようになった。

 これはすべて、辞任しない小沢のおかげ。すべての自民党議員が小沢続投のままで次期衆院選に臨みたいと思っていたはずだ。小沢代表なら自民党の勝算が高まる一方で、民主党は苦戦を免れない。民主党候補は地元選挙区に帰ると、まずは代表の資金管理団体をめぐる事件の「おわび」から始めなければならない。

小沢氏続投、納得しない世論

 小沢辞任会見当日の5月11日付読売新聞朝刊は、1面トップ大見出しで「小沢氏続投『納得せず』7割」と報じた。同紙によると、公設秘書起訴後の小沢続投に「納得できない」という世論調査の回答は71%(前回4月調査66%)に達し、「納得できる」は22%にすぎない。民主支持層に限っても、「納得できない」は56%(同43%)に上る。一方、内閣支持率は28.7%(同24.3%)にまで回復し、不支持率は59.7%(同66.5%)に低下した。

 明らかに小沢続投は、民主党にとってマイナスとなった。小沢も会見では「(挙党一致に)少しでもマイナスの部分は自分自身が身を引くことによって取り除いていきたい」と語り、その大きさはともかく自らの続投は「マイナス」と認めざるを得なかった。