(英エコノミスト誌 2025年1月4日号)

新しい主人を迎える前にざわつき始めた(혜림 서によるPixabayからの画像)

トランプ流のカオスと矛盾から何か良いものが生まれる可能性もある。

 すでに厄介な事態になっている。

 ドナルド・トランプ氏がホワイトハウスに到着してもいないのに、同氏を取り巻く騒々しいアドバイザーたちは互いを非難し合っている。

 最近ではイーロン・マスク氏をはじめとするテクノロジー業界の大物たちが、高度なスキルを持った移民の扱いをめぐってMAGA(米国を再び偉大にする)運動の支持者らと対立し、罵り合っている。

1期目同様バラバラに見える経済政策チームだが・・・

 端から見るとビザ(査証)をめぐる小競り合いにすぎないが、実はこの対立ははるかに深い溝の兆しだ。

 テック業界が政治の都ワシントンに乗り組んでくるのは米国史上初めてのことであり、その世界観はMAGA運動のそれとは驚くほど異なっている。

 両者間の緊張はいかに解消されるのか。そしてどちらが優位に立つのか――。

 この問いへの答えが向こう4年間の米国経済と同金融市場に多大な影響を及ぼすことになる。

 トランプ氏は1期目と同様、本質的にバラバラで矛盾さえはらんだ目標を掲げて経済政策チームの人選を進めてきた。

 トランプ氏が政策担当の大統領次席補佐官に選んだスティーブン・ミラー氏をはじめとする筋金入りのMAGA派は反貿易・反移民・反規制を掲げており、熱狂的な支持基盤に支えられている。

 これに対し、財務長官に指名されたスコット・ベッセント氏や、国家経済会議(NEC)委員長に起用されるケビン・ハセット氏のような共和党主流派は、何よりもまず低い税率と小さな政府を重視する。

 しかし、今回はここに新たな派閥が加わり、状況がなお一層荒れやすくなっている。

 シリコンバレーからテック業界の経営者たちが乗り込んでくるのだ。