(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年11月7日付)
今にして思えば、2024年の米国大統領選挙の帰趨は2020年8月12日に決していた。
ほかでもない、大統領候補のジョー・バイデン氏が副大統領候補にカマラ・ハリス氏を選んだ日だ。
バイデン氏の年齢を考えると、これによってハリス氏が中期的に民主党をリードする強い立場に立った。
あの当時、この人選に疑問を呈することは、リベラル派においては孤独なうえに報われない仕事だった。
4年経った今なら、ひょっとしたら主張しやすくなっているかもしれない。
候補者選びでミス重ねる民主党
ドナルド・トランプ氏を相手に展開した選挙戦は悪くなかった。決定的な失言は一度もなかった。
2つの大きなテスト――民主党大会での演説とトランプ氏との公開討論――もパスした。
だが、ハリス氏は思考が曖昧で、演説で言葉を濁すことが時折あった。
危険なほど不人気なホワイトハウスとの結びつきもあった。多かれ少なかれ、高インフレは現職にとっては致命傷だ(英国保守党のリシ・スナク前首相に聞いてみるといい)。
そんなことをすればますます物価が上がると警告されているにもかかわらず、現職がバラマキ政策を選択した場合はなおさらだ。
民主党には、バイデン氏やバイデノミクスとのつながりによる傷があまりない候補者が必要だった。
今回だけ候補者の選択が悪かったということなら、民主党は後悔したうえで前に進めるかもしれない。
だが、人選のミスは典型的だった。
2016年の選挙にヒラリー・クリントン氏を立てたこと。
テレビ討論でその思い上がりが露見するまで、バイデン氏が2期目を全うできるふりをしたこと。
重要なペンシルベニア州で高い支持率を誇るジョシュ・シャピロ知事をハリス氏の副大統領候補に選ばなかったこと――。
こういう状況では、なぜこの選択が不可避なのかという利口ぶった理由付けが必ずある。
実際には、「理由」は怠慢に近いようなまずい判断だった。民主党は権力に対して真剣でなく、ほかの人々がそれによる結果と付き合わざるを得ない。