(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年9月30日付)

レバノン国境付近で拳を突き上げて威勢を上げるイスラエル兵(10月1日、写真:AP/アフロ)

 イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ指導者のハサン・ナスララ師の殺害は、イスラム組織ハマスによる10月7日のイスラエル攻撃の1周年記念の数日前に実行された。

 ヒズボラのトップ殺害により、イスラエル政府は地域の敵対勢力との戦いでようやく主導権を握ったことを期待している。

「抵抗の枢軸」に決定的打撃のチャンス

 米国は紛争をさらにエスカレートさせないようイスラエルに求めている。だが、イスラエルは恐らく今この瞬間を、逃すにはあまりに惜しい好機と見なすだろう。

 多くの人は今、ヒズボラだけでなくイラン、さらにはハマスやヒズボラ、イラクとシリアの民兵組織、イエメンの武装組織フーシを含むイラン率いる「抵抗の枢軸」に対して決定的な打撃を与えることを期待し、この優位を最大限に生かしたいと考えている。

 ナスララ師の殺害直後、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「何年にもわたって地域のパワーバランスを変える」機会について語った。

 イスラエルが「抵抗の枢軸」に甚大なダメージを与えることができれば、やはりイランを恐れ、フーシを相手に戦争を戦ったサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)でも、その偉業が静かに歓迎されるだろう。

 イスラエル政府とは異なり、サウジは引き続き、中東での永続的な平和の実現にはパレスチナ国家の樹立が欠かせないと主張している。

 サウジ政府には、自国の野心的な発展計画を脅かす地域の戦闘の激化を恐れる妥当な理由もある。