ある絵画の展覧会

「表現の不自由」展問題で揺れる「あいちトリエンナーレ」に設置された、あり方検証委員会から、9月25日「中間報告」(https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/256626_865255_misc.pdf)が発表されました。

 この問題について、発生直後からかなり体系だった解説を記してきた私は、率直に申して最初は全く期待していませんでした。どうせお手盛り委員会で大したことはしないだろう、と。

 しかし、それをよい意味ではっきり裏切る非常に冷静な「報告」が提出され、正直、驚き、また感心しました。

 事実経過が淡々と記述され、それらに妥当な法的評価が付されたうえで、報告書の95ページにあるように、(再開に向けて)として「条件が整い次第、速やかに再開すべきである」と明言していることは、特筆に値します。

 今後の日本の現代美術展のあり方を考えるうえでも、重要な一石になっているように、一芸術人として私はこれを評価します。

 また同時に、この報告書に対するメディアや俗流評論家類の素っ頓狂なリアクション群に、改めて呆れました。

 しかし、ナチスドイツの情宣がまさにそうでしたが、根も葉もないことでも1000回繰り返していれば既成事実になるという「ポストトゥルース」の病を避ける意味でも、何が問題であるかをはっきり白黒、ケジメをつけておく必要があるように感じます。

 さらに、この発表を待っていたかのように、文化庁からの助成金を交付しない由の発表がありました。そんなことはあり得ない、として愛知県は直ちに法廷で争う姿勢を示しました。

 この「助成金交付」「不交付」のやりとりに関しても、メディアには見識あるやり取りも見られる一方、俗流の解説未満を目にしないわけではありません。

 善し悪しと別に、こうした事柄はすべて公金支出に関する「プロセス」手続きが問われます。それは、素人大衆が面白がるようなスキャンダルとは、かなりかけ離れた手続き上の瑕疵が問題にされる議論です。