アイルランド国民投票、リスボン条約を否決

国民投票重視のEU(参考写真=アイルランド)〔AFPBB News

近年欧州の幾つかの国で、ユーロ圏加盟やEU憲法条約などその国の大事を国民投票によってその是非を諮ったとの報道に接する。代議制議会に直接民主主義の手法を取り入れることは特異な例ではなくなった感がある。

 わが国では政治の世界でも学者の世界でもメディアの世界でも関心がないようであるがどうであろうか。

 昔、こんな事があった。昨年亡くなったが、長年日本社会党の衆議院議員をされた上田哲さんが、平成5年に「国政における重要問題に関する国民投票法案」を社会党議員大多数の賛成署名を添えて提出しようとした。

 ところが国会対策委員長の承認印がない。議員運営委員会理事会の申し合わせがあって国対委員長の印のないものは受理できないことになっていた。事務方が申し合わせに背くわけにはいかない。いかなる党内事情があるのか国対は頑なに判を押さない。受理せよ、できないと押し問答しているうちに、宮沢内閣不信任案が可決されて、衆議院は解散になってしまった。

 こんな一幕があって、わが国ではじめての国政に関する国民投票制度導入の提案は日の目をみなかった。

 また、憲法改正論議のなかで改正手続の不備が指摘され、平成18年第164国会に自民、公明から「憲法改正手続に関する国民投票法案」が提出された際、民主党からはそれに加えて重要政策についても国民に諮問できる法案が提出された。

 第166国会で憲法改正に関する国民投票は成立したが、残念ながら、重要政策についての方は国会でも世上でも大して話題にもならなかった。

 先の参議院議員選挙以来、国会は「ねじれ」て議会政治は閉塞した状況にある。55年体制発足以来、今年で54年目、その間、野党に政権が移行したのは細川、羽田内閣の僅かに1年。攻守所を変える経験がなかったに等しいから、議会運営に対して共通する認識が広がらなかった。「ねじれ」の状況下でも運営の手法は旧態依然、過去の先例のうえを歩いている。

 35年ばかり前、英国に在勤していたが、その頃既にEC加盟やスコットランド分権をめぐってレファレンダム「国民投票」論議が盛んであった。それに重要政策なり問題の議会での対応をみると、政府はいきなり法案を提出するのでなくて、予め大網なり方針を演説や青書を通じて明らかにする。

 それは議会での決議を求める形になっていて、可決されればそれに基づいて法案を提出する。重要政策の多くの場合、法案を提出する前に議会で大筋の了承をうる、こういった実態があった上での論議である。

 翻って、わが国の場合、そのような素地もなく、あいかわらずの運営の有様である。政権交代が現実のものとして語られているが、交代に習熟して議会運営が平常に行われるようになるまでにはまだまだ時間がかかるであろう。そうした状況下では国民投票制度など胡乱な話に思えるだろう。まして政権党にとって国民に直接諮ることは屋上に屋根を作る余計なことでもあろう。

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 しかし、制度が変わらない限り「ねじれ」は先々にも起こりうるし、それに選挙に問うことなく与党内で内閣をまわすことが当たり前のように行われ、他方、郵政民営化法案の経緯のように議会の手段を尽くさずに手軽に選挙が行われる昨今の事態を重ね合わせて考えると、総選挙や通常選挙で民意を問うだけでなく、重要政策についても直接民意に諮る道を開いて議会の意思形成を補完するのは旧来の陋習を打開する1つの方策になると思う。議会活性化にも連なるであろう。

 政権交代に習熟しないうちは実現は難しいであろうが、せめて論議くらい盛りあがってほしいものである。