二大政党間における政権交代が実現した。いわゆる55年体制、二大政党体制になってから54年、その間1年足らず細川、羽田内閣へ政権の移行があっただけで、自民党が政権を保持した。議院内閣制議会として尋常ではない。議会運営も歪に育った。
わたしは、衆議院事務局にいて混乱の事態や議会の本旨に外れた行動に幾度となく直面した。政権交代が行われさえすれば、直ぐに改まるのにとの思いにかられた。野党は事あるごとに実力を行使し、与党は国会をクリアーするのに時間と労力を費やす、内閣は国会との係わりを必要最小に、たとえば総理や大臣の出席説明を出来るだけ抑えようとする、そんな風潮を生じ、審議の有り様は次第に矮小化してきたように思う。
国会の活性化を図る目的で政府委員制度の廃止、党首討論の設置などの改革が行われたが、審議の実態はあまり代わり映えしていない。
細川内閣への政権交代のときは、選挙の結果、野党が連合して政権を獲得したので、与野党が俄かに慣れない立場になってか、その後の政党の離合集散もあって、暫くは議事運営に意趣返しの応酬のような雰囲気があった。
今回は国民が政権の選択をしての交代である。二大政党政治へ一歩印した。この機会に、国会運営においても相応しい慣行定着へ一歩進めて欲しい。
そのためにはどんな方策があるのか、私の体験から日ごろ思っていたことを2つばかり述べたい。
1つは国会を国民への情報発信の中心にすること。幸い民主党は政治主導を旨としている。議院内閣制では総理をはじめ閣僚も本拠は国会であるから、大事は先ず国会の場で説明し、先ず国会に諮る、その慣行を確立していくことが肝要であると思う。政治主導とは官僚に対してだけではなかろう。国会こそ政治主導を示す舞台ではないか。
英国議会においては、“内閣の新しい政策の重要なニュースを最初に発表するのは議会である。如何なる不都合があろうとも先ず議会に提議する、この伝統は確固として確立している” という。首相をはじめ閣僚もいろいろな議事の機会を捉えて公表する。メディアに先に報道されたら議会がどんな反発をするか。極端な例が大蔵大臣の行うバゼット・スピーチ「予算演説」で、事前に洩れたら進退問題になる。