要するに、もはや韓国は「名簿を埋める」ことで慌てふためき、何とか必死に戦う準備を整えようとしている。しかし侍ジャパンは、名簿の上に“さらに層を重ねる”ことで勝ち筋を増やしてくる。

 前者が「欠けたピースをどう補うか」の議論に追われる一方、後者は「どの手順で相手を完膚なきまでに倒すか」の議論に入っている。その距離こそが、今の韓国代表が日本に抱く「苦悩」を最も端的に物語る。

松井、野茂の宮崎キャンプ訪問に対し「ずるい」と批判してしまう韓国の焦り

 勝てない10年の延長線上で、さらにエースが続けて消えた――。韓国が今直面しているのは、不運ではない。差が開いたまま迎える大会の“現実”そのものだ。

 宮崎での侍ジャパン合宿が報じられると、韓国国内では意外な方向に反応が噴き出した。

 ダルビッシュの帯同に加え、松井氏、野茂氏まで現地に姿を見せた――。日本人メジャーリーガーの新旧レジェンドたちが勢揃いした事実に対し、韓国側のSNSなどでは「卑怯だ」「ずるい」といった声まで飛び交っているという。勝負の公平性を論じるというよりも日本の本気度が、韓国の焦りを刺激したと見るべきだろう。

 もちろん、アドバイザーやレジェンドの激励はルール違反でも何でもない。短期決戦では技術以前にチームの自己像、あるいは勝つ集団としての空気を整える作業が重要になる。侍ジャパンはそれを手順として淡々と積み上げているだけだ。

 逆に言えば、韓国側が「卑怯」という言葉に逃げ込みたくなるのは10年勝てない現実と直前の負傷離脱の連鎖で、すでに心が揺れている証拠でもある。

 かつて2006年の第1回WBCを直前に控えた会見で、当時の日本代表の主力だったイチロー氏(当時シアトル・マリナーズ=現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が第1ラウンドA組同士の韓国、台湾に向け「向こう30年、日本にはちょっと手を出せないな、みたいな、そんな感じで勝ちたいなと思っています」と言い放った。これに韓国側が過剰反応を示し、因縁が深まったことがあったが、今思えば「30年」は大げさにしても「3分の1」は事実上、現実化してしまった格好といえる。

 3月7日、19時からプレーボールとなる東京ドームのWBC1次ラウンドC組・日韓戦。問われるのは戦力差以上に、どちらが平常心を保てるかだ。ディフェンディングチャンピオンの侍ジャパンは黙々と環境を整え、韓国は言葉が揺れる。勝負は、その温度差から始まっている。