来日中の韓国メディア関係者は、こう吐き捨てるように言った。「勝ちに行く、という言い方がもう苦しい。勝つ姿を想像できない相手と戦う時、人は“順位”に逃げる」。
実際に韓国国内での世論は次のWBCについて、いつしか勝負の物語の行方が「1次ラウンド2位突破」という安全地帯に退避しつつあるという。
WBCに向けサイパンでの第1次キャンプに出発する韓国代表の選手たち=1月9日(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
しかし、ここには韓国野球が抱える厄介な矛盾がある。隣国の宿敵・日本戦を「捨て試合」にした瞬間、韓国代表の空気はむしろ悪化する。短期決戦の代表チームは、勝敗以上に「何を優先したか」を選手に突きつけるからだ。
「もはや日本は『最大のライバル』ではなくなった」
日本戦を避けて他国戦に全振りする――。その合理は、選手の側から見れば長らく宿命のライバルとしてしのぎを削ってきた相手国に「負けを織り込む宣言」に聞こえる。
しかも日本は、そうした相手の揺れを見逃さない。侍ジャパン関係者もWBCの日韓戦に関し、淡々とこう言う。「相手が“割り切った顔”をした時ほど危ない。ベンチの言葉と、選手の本能は一致しないから」。
その言葉はまるで反面教師にしているかのようであり、韓国代表が抱え込む苦悩を題材に自分たち侍ジャパンの面々を律し、あらためて引き締めを図るように映った。
勝てない10年は相手国の戦術を縛るだけでなく、自国の心理も縛る。さらに、その縛りを強めてしまったのが最近の“数字の積み上げ”だ。
韓国国内では「この10年で、もはや日本は『最大のライバル』ではなくなった」といった論調すら出始めている。言い換えれば敗北の蓄積が「競争の物語」を擦り切れさせ、代わりに「不可逆」という言葉を呼び込んでしまった。