米国の構想に付き合うのは高市政権くらいか

 結局のところ、米国が描くレアアース貿易圏構想は、自由貿易であり価格メカニズムを通じた需給調整を否定するものだ。そして、負の供給ショックが経済の体質改善につながる道を閉ざすことにもつながる。例えば産油国による供給減に基づく原油価格の高騰は、常に需要国の原油使用量の削減につながり、経済効率の改善に寄与してきた。

 各国を圧迫し国際的な指導力を自ら低下させてきた米国の描くレアアース貿易圏構想が効果的に機能する展開はまず予想しにくい。ただ、日本の場合は高市政権が発足して以降、トランプ政権から政治的にも経済的にもさまざまなフォローを受けている。ゆえに対価として、米国が描くこの構想に対して強いコミットメントを求められる公算が大きい。

 その日本では、経済安全保障のためにはコストが高くなっても重要鉱物の自主鉱山を開発すべきだという意見がある。日本の最東端に位置する南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)の海底下にある高いレアアース泥に大きな期待が集まっているのもそのためだ。一方、かつての日本には、ほぼ同様の理屈で石油公団が自主油田開発を推し進めて失敗した過去がある。

 過度な経済安全保障への傾斜は、自由貿易を通じた体質改善の機会を自ら放棄することになりかねない。そうした道に、米日のみならず、世界は着実に進んでいるのかもしれない。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。