当確者の名前にバラを付ける自民党総裁の高市首相=8日午後9時42分、東京・永田町の党本部(写真:共同通信社)
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 2026年の衆院選は、高市自民の“圧勝”に終わった。前回24年の衆院選で大敗を喫し、苦しい国会運営を強いられてきた自民党にとって、念願となる強力な権力基盤を取り戻した形だ。新党・中道改革連合の誕生で苦戦が予想されながら、自民の大勝となったのはなぜだったのか。そして今回手にした勢力を武器に、高市政権はどう動くのか――? 豊富な政治取材経験があり、国政に広範な人脈を持つジャーナリスト・市ノ瀬雅人氏が解説する。

(市ノ瀬 雅人:政治ジャーナリスト)

高市早苗に始まり、高市早苗に終わった

 衆院選は8日投開票され、高市早苗首相(自民党総裁)率いる自民党が圧勝した。

 不意打ちと称された衆院解散の電撃的手法から、サナエブームなどと社会現象的にまでなった人気を最大限に生かそうとした戦略まで、いわば「高市早苗に始まり、高市早苗に終わった」選挙であった。

 勝因は、60%前後の高い内閣支持率を背景に、高市首相を前面に出し、本人への信任投票の性格を強調する争点設定に成功したことだ。

 まずは高市政権の継続と安定的運営を訴えの基軸に置き、その上で党や政権公約への支持を求めた。これらに大衆人気をオーバーラップさせ、若い世代と無党派層の取り込みに成功した。

 国論を二分するような特定の政策や法案を取り出して、是非を問うたのではない。各論に深入りするより、高市氏が掲げる政策全般をいわばパッケージとして進めることに賛同を求めた形となった。

 同様に、首相の個人的人気が勝因となった例として、2005年の小泉純一郎首相による郵政解散が思い出される。この時は郵政民営化への賛否という鮮明なワンイシューが問われた選挙戦であり、今回とは争点の仕立て方が明らかに異なる。

 今回の結果を受け、高市首相の看板政策については、結果的にしろ理論上は丸ごと信任が与えられた形になった。高市カラーと呼ばれる政策には、例えば積極財政政策から防衛力強化、スパイ防止法、ひいては憲法改正まで、それこそ国論を二分するであろうものが複数、明確に存在する。

 日本が戦後80年間に積み残してきたとも言えるこうした政策が、順序を追いつつも、はずみを持って動き出すことになりそうだ。戦後政治の転換点になる可能性は十分にある。

 一方、立憲民主党、公明党の衆院議員が合流して結成した新党・中道改革連合は、惨敗という、これもまた衝撃的な結果となった。党の立て直しが容易でないのは言うまでもない。

街頭演説で支持を訴える中道改革連合の斉藤共同代表(左)と野田共同代表=7日夜、東京都江東区(写真:共同通信社)

 中道のうち、特に旧立憲民主党は勢力を激減させた。これは、戦後の日本政治において初めて、国会で左翼勢力がごくわずかになったことを意味する。

 中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三各自民党総裁ら、長期政権を築いたいずれの首相の時も、起こらなかったことだ。本当の意味で、日本において戦後政治と呼ばれる体制は終わりを告げ、羅針盤なき新時代を迎えた。奇しくも、初の女性首相が生まれた時と重なった。

 半面、野党第一党は本来、明確な対立軸を持って政権に対峙、チェック機能を果たすべき存在だ。勢力が極めて小さくなったことが、日本の議会制民主主義の後退につながってはならない。野党の役割も強く問われる。

 翻って与党では、解散を打ち、狙い通りに勝ち取った高市首相への権力の集中が飛躍的に高まることになる。今回、落選中だった多くの元職が返り咲き、新人も議席を得た。これらは、ありていに言えば、高市首相による乾坤一擲の解散のおかげだからだ。

 “高市チルドレン”とも言うべき存在が、高市氏の求心力を高め、脆弱と言われた党内基盤は一転して強化されることとなる。高市氏が師と仰ぐ故・安倍晋三元首相による「安倍一強」ならぬ「高市一強」状態が生まれる可能性がある。

 衆院選の結果を概略的に分析し、先行きを俯瞰すれば、このようになる。以下、因数分解的に噛み砕きながら、分け入って述べていきたい。