近年の「自民勝ちパターン」の真逆の戦略

「国が緊縮、緊縮と言って緊縮財政をやっていたら、日本は希望の持てない国になる。自民党の公約に初めて積極財政を出した。大きく政策転換する」

「自民党が圧勝するのではないか、自民党を勝たせ過ぎてはいけないのではないか。そういう声が入ってきており、私は悔しくて仕方がない。小選挙区は厳しい。わずか100票差で負けることがある」

 高市首相は選挙戦最終日の7日夜、東京都世田谷区で街宣車の上に立ち、元職若宮健嗣氏の応援で演説活動を締めくくった。「与党300議席」などの予測報道を踏まえ、緩まぬようくぎを刺した。

 高市内閣は特に若い世代の支持が厚い。衆院選公示直前の1月24〜25日に行ったFNN世論調査によると、18歳〜20代に限った内閣支持率は88.7%に達した。

衆院選で1票を投じる有権者=8日午後、東京都内(写真:共同通信社)

 自民党の公約パンフレットの冒頭に高市氏が記した序文には「希望ある未来」「日本の未来は明るい」「日本にはチャンスがある」「夢を持って働ける国」といった若年層を想定した言葉が並ぶ。

 若い世代になじみの深いYouTubeによる動画再生、SNS投稿の多さも取り沙汰された。若者層取り込みという一貫した軸が見て取れる。

 自民党候補のSNSには「高市首相が公認した候補者です」といった表現が頻繁に見かけられ、高市氏とのツーショットが溢れた。高市首相の街頭演説には数千人が集まる光景が相次ぎ、集票効果を裏付けた。

 自民党と日本維新の会の連立与党は衆院で過半数(233)ギリギリ、参院では過半数を割っていた。こうした状況を踏まえ「この衆院選で自民党の議席を増やし、高市政権が掲げている政策を実行できるように力を与えてほしい」という主張が軸になった。

 まさに首相本人も候補者も、首相への信任選挙を地で行ったのである。半面、首相演説では、他党を批判する内容は影を潜めていった。

 無論、前提として、憲政史上初の女性宰相という目新しさがある。そして、親しみやすそうなキャラクターがそれを補強する。甲高い声を張り上げる演説とは一線を画す。鼻にかかった低い声を基調に、緩急をつけ、時には関西弁で「おばちゃん」キャラまで演じるのである。

 読売新聞社が2月3~5日に実施した衆院選の終盤情勢調査によると、自民党は18~39歳からの支持は約3割で、国民民主党を抑えてトップ。従来、野党より劣勢であることが通常だった無党派層からの支持も、1割強と中道に並んでいた。無党派、若年層に確実に浸透したことが分かる。

 自民党が公明党と連立を組んでいた当時、近年の国政選挙の典型的な勝ちパターンは、低投票率の下で組織票を固めて逃げ切るというものだった。今回は真逆である。特に若い世代の投票を重視し、投票率を上げることが勝敗を分けると捉えた。