「食うか食われるか」の権力闘争
先に動いたのは、苗華グループだった。習主席は2023年3月、張又侠グループの李尚福委員を、国務委員(副首相級)兼国防部長(国防相)に据えた。ところが、わずか5カ月後の8月末から姿が消え、10月24日に解任された。翌2024年6月27日には、党籍を剥奪された。重大な汚職疑惑である。
すると、張又侠グループが「逆襲」に出る。苗華委員の「重大な汚職疑惑」を暴露し、2024年11月28日に苗委員の職務を停止させた。翌2025年6月27日には、中央軍事委員会の委員も解任した。10月17日には、党籍剥奪処分が発表された。
続いて、苗華グループの何衛東副主席も、2025年3月から動静が途絶えた。そして同じく10月17日に、重大な規律違反で党籍剥奪処分が発表された。
これで、人民解放軍内部の権力闘争は、張又侠グループが勝利したかに見えた。ところがどっこい、今年に入って苗華グループが「大反撃」に出たというわけだ。冒頭記したように、1月24日、張又侠副主席と劉振立委員を、一気呵成に失脚させてしまったのである。
かくして、アガサ・クリスティの小説ではないが、「そして誰もいなくなった」。今後の人民解放軍の行方について取材すると、日本から見て「楽観論」と「悲観論」に二分された。
まず楽観論は、軍幹部たちが軒並み消えたのだから、人民解放軍は当分の間、内部の混乱収拾で手一杯となる。そのため、軍を統制できていない習主席は、台湾への軍事侵攻などの戦闘行為には出られないという見方だ。
一方の悲観論は、これでいよいよ「習近平の人民解放軍」になる。「戦争反対」だった幹部たちが消えたため、習主席が目指す「台湾統一行動」がむしろ早まるという見方だ。1930年代にソ連のヨシフ・スターリン書記長が、まず軍幹部を粛清してから対独戦争に踏み切った前例もある。
前者であってほしいが、もしかしたら後者かもしれない。





