外はサクサク、中はもっちりしたドチョンク(写真:farrgos/Shutterstock)

味だけでなく購入プロセスも楽しむ

 断面からあふれ出るピスタチオクリームのビジュアルも相まって、「一口で贅沢感を味わえるスイーツ」という印象を強く与える。

 とはいえ、レシピや見た目だけで社会現象が生まれたわけではない。決定打となったのは、SNSによる拡散だった。

 ブームの起点は、人気ガールズグループIVEのメンバー、チャン・ウォニョンが2025年9月にインスタグラムへ投稿した一枚の写真だとされる。

 韓国で絶大な影響力を持つK-POPアイドルが「食べた」瞬間、ドチョンクは単なるお菓子から、「一度は体験すべきトレンド」へと変貌した。

 その後、人気ユーチューバーやインフルエンサーが、開店前から並ぶ「オープンラン」や、買えた・買えなかった体験を動画で共有し始める。

「一人一個の購買制限で、家族の分はまた明日」

 そんなストーリーが短尺動画として次々に拡散され、行列に参加する行為そのものがコンテンツ化していった。

 ドチョンクは味覚以上に、「手に入れるまでのプロセス」が楽しまれる存在になった。

 希少なスイーツを探し当てる達成感と、失敗したときの悔しさ。その繰り返しは、ゲームやガチャに近い消費体験とも言える。

 実は、この現象を理解するには、インフレと高金利が家計を圧迫し、全体的な消費マインドが冷え込んでいる韓国の経済環境を無視できない。