復帰後は「歩くことから始めました」

2026年1月20日、スキージャンプ女子W杯蔵王大会での丸山希 写真/YUTAKA/アフロスポーツ

 楽しいから続けてきたジャンプだが、昨シーズンまではそうでない時間も少なからずあったと振り返る。

「ずっと悔しい状態が続いていて、『こんなにスキージャンプ楽しくなかったっけ』ってなるときもありました。でも飛距離を常に出せるようになると飛んでいる時間も長いので、『スキージャンプ、楽しい』という感覚に変わっていきました」

 原点に立ち戻ることができたとも言える。

 技術的な修正も功を奏したという。

「足の裏を意識し始めたのが昨シーズンの世界選手権の頃で、しっかりやり始めたのがこの夏です」

 体重をしっかり乗せることを意識するのとともに、助走姿勢も低くした。

「メジャーとかで測ってないので分からないんですけど、腰高のアプローチって言われてたのが言われなくなりました。5センチぐらいは変わらないと見た目分からないと思うので、それくらいは重心が低くなったんじゃないかなと思います」

 繊細な作業であったろう。その取り組みが例えば飛距離などに成果として表れているが、遠くへ飛ぼうとすることは、別の面でも壁を乗り越える試みであった。

 丸山は小学4年生のとき本格的にジャンプに取り組み始めた。頭角を現すのは早かった。2013-2014シーズンには全日本スキー連盟のジュニアチームに、中学生でただ一人選ばれている。2018-2019シーズンには開幕からワールドカップ遠征に参加し、以降、常にワールドカップに出場。ジュニア世界選手権や世界選手権なども含めキャリアを築いてきた。

 だが、2021年10月、全日本選手権の着地で転倒し左膝前十字靭帯損傷、外側半月板損傷、大腿骨腓骨骨挫傷の重傷を負う。このシーズンは北京オリンピックが控えており、丸山は代表の有力候補だったが断念せざるを得なかった。

 手術を受け、リハビリを経て復帰を志した。

「歩くことから始めました」

 と丸山は言う。

 やがて競技の場に戻った。ただ、いざジャンプを飛ぶと恐怖はぬぐえなかった。その克服に努めながら練習に、試合に臨んだ。その日々を思えば、昨春から、ともかく遠くへ飛ぶことを試みて距離を伸ばしていったことそのものが挑戦であった。そして打ち克ったからこその、大きな飛躍であった。