(田丸 昇:棋士)
「桂馬」と「竜馬」の違い
今年の干支は「午(うま)」。馬に関連する言葉には、「千里を駆ける馬」(優れた才能を持つ人物)、「人間万事塞翁が馬」(不幸になっても幸せに転じることがある)、「馬が合う」(気が合う)、「竹馬の友」(幼い頃によく遊んだ友人)など、良い意味に使うことがある。一方で「馬の骨」「馬脚を露す」「馬の耳に念仏」など、良くない意味の言葉もある。
将棋には「桂馬」に「竜馬」と、馬の字を当てた二つの駒がある。その違いを図①で説明する。
右側は桂馬で、略称は「桂」。カエルのように二段上の左右に「ピョン」と跳ねる。この身軽な駒が将棋というゲームをより面白くしている。
左側は竜馬で、略称は「馬」。上下左右に斜めに大きく動く「角」の成り駒(敵陣に入った駒)で、縦横にも一つ動ける。大空を翔ける「天馬」ともいえる。
なお棋譜の表記で馬は、角の成り駒の竜馬だけに使う。馬に関連する将棋の格言には、「馬は自陣に引き、竜(飛車の成り駒の竜王)は敵陣で使え」がある。馬は金銀3枚分の守り駒に相当するので、自陣か中段に引いた方が働くという意味だ。
竜馬が角の成り駒になった由縁は不明だが、鎌倉時代に指された「大将棋」(駒数は計130枚)には、ほかに動物を当てた駒が多い。鳳凰、獅子、麒麟、酔象、盲虎、猛豹、猛牛、悪狼、嗔猪、猫刃など。
図②は、通常の将棋の駒より10倍以上も大きい「置き駒」で、馬の字を左右逆に書いたものを飲食店などでよく見かける。これは「左馬」と呼ばれ、商売繫盛につながるという。由来はいくつかある。ウマの逆はマウ(舞う)でおめでたい、馬の字の下側は巾着の形に似てお金がたまりやすい、馬は人に引かれるがその逆は人が馬に引かれて入ってくる、などの意味がある。千客万来の願いが、左馬の置き駒に込められている。