ジェームス三木さんとの思い出

 私こと田丸は長野県の生まれ。明治時代中期は中南信の諏訪や伊那で、馬肉を食する習慣が盛んだったという。私も近年、行きつけの店で馬肉をよく注文する。ショウガ、ニンニクなどを添えた「刺し身」、卵の黄身やネギを和えた「ユッケ」が美味しい。食感は赤身マグロとローストビーフを掛け合わせたようで淡泊だ。上質の馬肉と根深ネギを味噌だれで煮る「桜鍋」も絶品だという。

 私は以前にディック・フランシスの小説を愛読した。イギリス生まれで、王室の皇太后の専属騎手になった。37歳で引退後は競馬ジャーナリストを経て、ミステリー小説『本命』を発表した。以降は『血統』『混戦』『試走』などの表題で、競馬を題材にした作品を書き続けて人気を博した。競馬ファンでもない私が惹かれたのは、精緻な内容と雄大な構想だ。ミステリーに付きものの殺人がほとんどないのも気に入っている。

 私は1990年の馬年の年賀状に、盤上に2枚の馬がいる詰将棋(図③)を載せた。それから16年後、脚本家のジェームス三木さん(昨年に90歳で死去)が、通販誌『カタログハウス』に私の年賀状を紹介し、《僕は将棋が好きで、詰将棋を見ると解かずにはいられない。田丸さんの問題は難しいけれど、解けたときは気分爽快。正月の宿題で精進していますよ、田丸さん》と書いた。

図③ ※玉方の持ち駒は金、銀 制作/アトリエ・プラン
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 その年賀状の詰将棋は11手詰め。詰め方の馬の王手に対する玉方の合駒がポイント。正解と解説は末尾にて。