韓国社会の深層文化が政治対立を増幅する
韓国社会には、儒教文化・集団主義・地域対立などが重層的に存在し、政治的事件が起きると世論が一気に盛り上がり、大規模な行動につながりやすい。
さらに、韓国社会の政治文化を考えるうえでは、軍政期の権力構造にも目を向ける必要がある。
朴正熙政権以降、陸軍士官学校出身者を中心とする「一心会」が政権基盤を形成し、軍内部の結束が政治的安定を支える要因とみなされてきた。
しかし、その延長線上にあった全斗煥・盧泰愚の両元大統領が、退任後にいずれも厳しい司法的清算を受けた事実は、軍政期の「内部結束」が退任後の安全保障にはつながらないことを示している。
これは、韓国政治において個人への権力集中が強いほど、政権交代後の反動もまた強烈になるという構造的特徴を象徴している。
軍政期のように政権基盤が軍内部のネットワークに依存していた場合でも、その保護は政権交代とともに一挙に失われ、むしろ「清算の対象」として扱われやすい。
全斗煥・盧泰愚の事例は、韓国政治における権力構造の脆弱性と、政権交代時のゼロサム性を端的に示すものである。
こうした背景には、社会全体の「情緒的反応の強さ」という特徴も指摘されている。
私が防衛駐在官として韓国に滞在していた1990年代初頭、日本側の関係者の間で「韓国社会は情緒の振れ幅が大きいのではないか」という雑談めいた議論が交わされることがあった。
中には、唐辛子やニンニクといった刺激の強い食文化が気質に影響しているのではないか、という半ば冗談のような話題もあったが、もちろん科学的根拠があるわけではない。
ただ、こうした「文化的体感」が語られるほど、韓国社会の政治的反応がしばしば激しく、行動が急速に広がるという印象が強かったのも事実である。
象徴的なのが、しばしば引用される「水に落ちた犬は棒で叩け」という厳しい政治心理であり、失脚した権力者への態度が急速に冷たくなる傾向がある。