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 第2次トランプ政権の発足後、アメリカ社会では緊張が続いています。大統領の発言や政策判断を巡って賛否が分かれ、社会の分断も一層深まっています。議会や司法の役割、民主主義の歯止めが十分に機能しているのかを問う声も強まっています。

 こうした状況を現地ではどのように受け止められているのか。長年アメリカに暮らし、内側からアメリカの社会や文化を見続けてきた映画評論家の町山智浩氏に、ドイツ出身で日本を拠点に活動するマライ・メントライン氏が話を聞きました。全3回でお届けします。

※JBpressのYouTube番組「マライ・メントラインの世界はどうなる」での対談内容の一部を書き起こしたものです。詳細はYouTubeでご覧ください。

(収録日:2025年12月19日)

日常化するトランプ政権下の異常事態

マライ・メントライン氏(以下、敬称略):米国社会は第2次トランプ政権発足後、さらに政治や文化、テック企業の動向などを含めて分断が進んでいるように見えます。現地の温度感を踏まえて、今の米国はどうですか。

町山智浩氏(以下、敬称略):毎日朝からいろんなことが起こっています。

 例えば今日(収録日した12月19日現地時間)は、ワシントンにある権威のある総合文化施設「ケネディ・センター」の理事会が、同施設を「トランプ・ケネディ・センター」に改称することを全会一致で決議しました。今年に入りトランプが理事長となり理事会を乗っ取った形で、ケネディ氏の遺族らから反発の声があがっています。

 他には最近、米政府が12月16日に全面的な入国禁止や一部の渡航制限を含む大統領令に署名し、渡航制限の対象国を従来の19カ国から39カ国に拡大しました。多くが、中南米やアフリカです。

マライ:制限する根拠は何ですか。

町山:首都ワシントンで州兵を射殺したアフガン移民についてSNSにトランプが「アニマルめ」「第三世界からの移民を永久に禁止する」と書いたのがきっかけです。

 大統領令を阻止できるのは最高裁ですが、その最高裁もトランプに有利な判断を下すことが続いています。議会もトランプに逆らえない共和党議員が多数を占めており、どんなトランプのデタラメな政策も通ってしまう状況です。

 一方で、トランプに忠誠を尽くしてきた共和党議員たちも少しずつ反乱を始めている印象です。足元では、必ずしも全ての共和党議員がトランプの法案に賛成投票することがなくなり始めています。

 共和党内の変化はまだ始まったばかりですが、今、最も深刻なのは戦争をめぐる問題です。トランプはベネズエラとの戦争の可能性を示唆していますが、戦争は本来、大統領が独断で決められるものではなく、議会の承認が必要です。2003年のイラク戦争でも、民主党を含む議会の賛成があって初めて開戦しました。