爆撃機が東京を攻撃する見せかけ戦略

 今回の飛行航跡を見てみよう。

 中国とロシアの爆撃機が宮古海峡を通過した後の飛行方向と折り返し地点を見ると、東京の手前約600キロで、東京に向けてミサイルを発射し、その後、中国に引き返す想定であるように見える。

 米国領のグアムに対しても同様のことを過去何度も実施してきた。

図3 中露爆撃機の飛行航跡と東京への模擬攻撃(イメージ)

出典:統合幕僚監部の航跡図に筆者が攻撃のイメージを加えた(図は、以下同じ)
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 Tu-95等が保有する巡航ミサイルは、射程が2500キロ以上ある。ウクライナ戦争での爆撃機のミサイル攻撃を見ると、攻撃地点は目標から約1500~2000キロ離れた位置からである。

 これを参考にすれば、東シナ海から東京に向けて発射すればいい。わざわざ東京まで600キロの地点まで近づく必要はない。

 では、なぜ、東京まで600キロの地点まで近づいたのか。

 おそらく、日本の統合幕僚監部が航跡を書いて公表すると見込み、「東京を狙って攻撃する想定」を日本のメディアや国民に伝え、衝撃を与えようとしたのだろう。

 実際、日本のメディアは、中国とロシアのこの行為を「威嚇か」「威圧的」などのタイトルを付けて報じていた。

 その意味では目的を達成した行動だったといえる。しかし、日本人の中国とロシア嫌いを増やし、日本の防衛費増加を認めるよう世論を誘導する副作用もあるはずだ。

 防衛の専門家から見れば、あまり賢い選択だとは思えない。