「価値ある差別化」がなぜ必要なのか?
■ステップ①:目標を実現するための価値ある差別化を行う
進む方向性が定まった後、次のステップとなるのが価値のある差別化です。実現しようとしている取り組みは、既存のものとどう違うのか。その違いによってどんな価値を生み出すことができるのか。
差別化は自分を納得させるためにも、チームの仲間を増やしていくためにも、顧客の心をつかんで事業を成功に導くためにも不可欠なものなのです。これを私は最初の事業の立ち上げから数年の間に痛感しました。
popIn創業時に開発したWeb関連のツールは、収益化が難しく、丸2年間、収益ゼロが続きました。悩んだ私は、popInの技術を使いながら、海外で登場した斬新な広告を真似ようと考え始めました。既存の市場で上位にいる会社の手法を日本に合うようにアレンジすれば、通用するのではないか、と思ったのです。
実際、その発案に興味を持ってくれるクライアントもいました。しかし、結局は勝負に出ることができずに終わります。
理由は、相手がいずれ日本の市場に入っていることが見えていたからです。あちらは海外のリーディングカンパニーで、経験もリソースも大きい。小さな会社だったpopInではとても戦いになりません。
何より、「あなたたちの広告サービスは、あの会社のサービスと何が違うのか?」と聞かれたとき、独自性をアピールできないことに気づいていたため、信念を持って動き出すことができなかったのです。

その後、私は事業をピボット(事業の方向転換や路線変更)し、2014年にローンチしたのがネイティブ広告配信プラットフォームの「popIn Discovery」でした。
popIn Discoveryとは、オンラインメディアの記事ごとの読了率を可視化し、読者の興味に合った記事を自動的にレコメンドするサービスです。
当時のオンラインメディアでは、記事が本当に読まれたのかも、読者が興味を持っていたのかもわかりませんでした。そこで、私たちは、記事に興味を持って読み進めたかを判断する仕組みを作ったのです。
そして、読了率の高い記事に関連した別の記事や広告を「こちらの記事もいかがですか?」「こちらの広告もご覧ください」とレコメンドしていくことを可能にしました。
つまり「読了率がわかる仕組み」と「レコメンド機能」、この2つが差別化となり、強みになったのです。