見逃せない注目の選手

 実力者もひしめく。中井、坂本、千葉とともにグランプリファイナルに出場、5位の成績を残した渡辺倫果はショートプログラム、フリー合わせてトリプルアクセルを3度入れている。その精度も向上しているのに加え、プログラム全体にも磨きをかけてきた。ジャンプも含め完成形を見せられれば、好成績を望める。

 日本女子初の4回転トウループ成功者である住吉りをんも注目の一人。シーズンを重ねるごとにベースアップし、グランプリシーズでの自身の初戦となったフランス大会ではショートプログラム、フリー、合計得点すべてで自己ベストをマーク。中井、坂本の好演技もあり3位ではあったが216.06点は他の大会なら優勝に届く点数であった。フィンランディア杯では7位にとどまったが全日本での巻き返しを期す。

 昨シーズン、グランプリファイナルにも進出(6位)した松生理乃はグランプリシリーズのフィンランディア杯で3位、調子は上向きにある。

 グランプリシリーズには出場していない中にも注目を集める選手がいる。三宅咲綺だ。

 トリプルアクセルの習得に取り組んできた三宅は、木下グループ杯で初めて国際大会に出場、3位となった。西日本選手権のフリーではトリプルアクセルをきれいに決めて、143.54点をマーク、合計でも200点を超えて優勝している。

 北京オリンピックに出場した樋口新葉は怪我の影響で望んでいたようなシーズンとはなっていない。痛みを抱えたまま出場したNHK杯、そしてスケートアメリカでも本来の演技はできていない。

 樋口は坂本同様、今シーズン限りでの引退を表明している。悔いのない演技を——全日本選手権に懸ける。

 オリンピックを目指す選手たちを紹介したが、全日本選手権が特別なのは国際大会の代表選考が懸かっているからばかりではない。この舞台を最大の目標としてきた選手がいて、ここを集大成とする選手も例年いる。

 誰もが心から納得のいく演技を披露することを、願いたい。

【全日本フィギュア展望・男子編】はこちら

『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』
著者:松原孝臣
出版社:日本ビジネスプレス(SYNCHRONOUS BOOKS)
定価:1650円(税込)
発売日:2026年1月20日

 冬季オリンピックが開催されるたびに、日本でも花形競技の一つとして存在感を高めてきたフィギュアスケート。日本人が世界のトップで戦うのが当たり前になっている現在、そこに至るまでには、長い年月にわたる、多くの人々の努力があった——。

 日本人がフィギュアスケート競技で初めて出場した1932年レークプラシッド大会から2022年北京大会までを振り返るとともに、選手たちを支えたプロフェッショナルの取材をまとめた電子書籍『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』(松原孝臣著/日本ビジネスプレス刊)が2026年1月20日(火)に発売されます。彼らだからこそ知るスケーターのエピソードも満載、フィギュアスケートファンはもちろん、興味を持ち始めた方も楽しめる1冊です。