ロシア産原油の海上輸送が全面禁止へ?

 米国政府は8月、ロシア産原油を購入しているインドに25%の関税を課し、10月にはロシアの石油最大手ロスネフチとルクオイルの2社に包括的な制裁を発動した。

 海運分析企業ケプラーによれば、ロシアから海上で輸送される日量350万バレルの9割強は中国、インド、トルコ向けだ。だが、米国の制裁により、ロシアは海上で輸送される原油の買い手の確保に苦労している。ロスネフチの積み荷が11週間も海上で漂流しているとの情報が流れているほどだ。

 ロシア産原油の最大の買い手である中国にも変化がみられる。

 中国の11月の原油輸入量は前年比4.9%増の日量1238万バレルと2023年8月以来の高水準だったが、ロシアからの輸入は減少した。ケプラーによれば、サウジアラビアからの輸入が前月比5万バレル増の日量159万バレル、イランからの輸入は前月比23万バレル増の日量135万バレルだったのに対し、ロシアからの輸入は前月比16万バレル減の日量119万バレルだった。

 ロシアの原油生産量は日量約930万バレルだが、買い手が見つからない状況が続けば、減産に踏み切らざるを得なくなるだろう。

 ロシア産原油の大半が米国の制裁対象となったことで価格上限制度が意味をなさなくなったため、海上輸送の全面禁止に切り替えようとしているわけだ。

 だが、海上輸送の禁止には大きな問題がある。ロシア産原油の輸送経路にある諸国が制裁違反タンカーへの臨検などを強化しなければならなくなるため、ロシアとの軍事的な衝突が生じる恐れがあるからだ。