日本維新の会の奥下剛光衆院議員(右)と藤田文武共同代表=2025年10月20日、国会(写真:共同通信社)
(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
政治資金の性質を履き違えた「キャバクラ費計上」
新しい政治資金収支報告書が公開されたことから、報道やネットで問題の洗い出しが活発に行われている。その過程で、日本維新の会の奥下剛光衆議院議員の資金管理団体が、政治資金をキャバクラやラウンジといった遊興施設での飲食費に充てていた問題が発覚した。
この事案は、一議員のモラル欠如や資質の問題にとどまらず、いまだ解決しない令和の政治とカネ問題への懸念を改めて惹起するが、本稿ではそのなかでも政治資金規制の構造的な課題、さらには監視すべきジャーナリズムの疲弊に伴う「後追い報道不足」の可能性に言及してみたい。
まず、事案の概要だが、報道および収支報告書によれば、奥下氏の資金管理団体「奥下たけみつ後援会」は、2023年春、東京・赤坂のキャバクラや大阪・ミナミのラウンジにおける飲食代として計9万円余りを政治資金から支出していた。奥下氏側は当初、「企業関係者との会合であり、政治活動の一環」「適切に処理した」などと釈明した。
◎奥下剛光議員の記者対応全文:政治資金でキャバクラやラウンジに支出 維新・奥下議員が釈明21分「今回は返金する」が「ポケットマネーでやるには限界ある」(ABEMA TIMES)
だが、このような弁明は社会通念上、到底成立し得ない詭弁というほかないだろう。真面目に言及するのも馬鹿らしいが、そもそも、キャバクラ等の接客を伴う飲食店において「仕事をする」という理屈は成立し難いことは明らかだ。
仮にそれが民間でいうところの接待であったとしても、それはあくまで接待する側の論理であり、接待される側、あるいは対等な関係での会食においてさえ、その費用が経費として認められるかはそれほど自明ではない。
付言すれば、奥下氏の言い分通り、相手を接待していないような場合に、つまり「社員が自腹でキャバクラに行った費用」が経費として認められる会社があれば、理屈とともに知りたいくらいである。そもそも論として、外形的にそのような機会が不適切であることは明らかだ。
「自腹で支払えば済む話」をあえて政治資金に付け替える行為は、国民を軽視しており、政治資金の公的性格を根本から履き違えていると言わざるをえないだろう。
加えて、議員自身がSNS上で「適切に処理したつもりだった」と述べつつも、後に当該投稿を削除するなど、説明責任に対する不誠実な姿勢も際立っている。