中立性を失うソーシャルメディア
ウエブの信頼性を損なう4つ目の要素は、ソーシャルメディアが中立なプラットフォームではなく、党派的な出版社のような振る舞いを見せることだ。
イーロン・マスクはツイッターを買収すると間もなく、同社のコンテンツ監視機能のほとんどを破壊し、ニューヨーク・タイムズ紙の分析によれば、それが人種差別や分断を招く投稿の急増につながった。
アカウントに関するデータを公開し始めたXの最近の動きは、「信頼できない」ユーザーをあぶり出すことにこれまでより真剣であることを示唆している。
だがこれも、ほかのソーシャルメディアサービスのセーフティーチームにおいては何年も前から標準的な業務手順になっている。
AIでパワーアップした過激主義者や悪意ある外国勢力が寛大なソーシャルメディア会社の脆弱性をさらに利用する見通しは衝撃的だ。
だが、エブナーはこうしたトレンドについて短期的には悲観論者だが、長期的には楽観論者だと主張する。
目の肥えた次の世代に期待
これらの問題については、今や政府や規制当局の間でも認知度が高まっている。対話のネットワークとして稼働でき、対立よりも協力を促す革新的なプラットフォームも生まれてきている。
AI企業とソーシャルメディアサイトは、人間が制作したコンテンツにこれまでよりも高い価値を付けている。それに、ユーザーがオンラインで見かけるものに対する健全な懐疑主義も特に若者の間で強まっている。
「次の世代がますます高いレジリエンスを示すことに大きな期待を抱いている。こうしたテクノロジーがどのように作用するか、彼らは直観的に分かっている」とエブナーは話してくれた。
加えて、ほかの政治家たちもソーシャルメディアをマスターしつつある。新たにニューヨーク市長に選ばれた34歳の民主社会主義者ゾーラン・マムダニは、インターネットの動画を通じて多くの支持を獲得した。
ある識者は「ニューヨークで勝つことは、今ではTikTok(ティックトック)を流暢に操れることを意味している」と評している。
ソーシャルメディアにどんな欠陥があろうと、これは政治家であれば決して無視できない教訓だ。
(文中敬称略)