欧州に残された解決策

 こうしたことから、欧州には難しい解決策が1つ、そして悪い解決策が1つ残されることになる。

 難しい解決策とは、競争力をさらに高めることであり、米国がテクノロジー産業でやっているように新たな価値の源泉を見つけ出すことだ。

 これは改革の促進、福祉の削減、そして規制の緩和を意味する。福祉や規制自体が悪いからではない。競争を促せば福祉などに力を割く余裕がなくなるからだ。

 だが、そこまでやっても、中国があらゆるモノを低価格で輸出しようとする一方で輸入には興味を示さない世界では、恐らく十分ではない。

 となれば、これに代わる策は内需に頼ることしかない。すると、これが悪い解決策――貿易保護主義――に至る。

 今では工業を維持しようとする場合に大規模な保護政策をどうすれば回避できるかが、ますます見極めにくくなっている。欧州においては特にそうだ。

 悪い解決策はあまりに打撃が大きく、問題をはらむため、勧めることは困難だ。

 中国は米国の関税を受け入れたが、米国は中国が対等と見なす唯一の国だ。米国以外の国が貿易障壁を設ければ、北京政府は攻撃的な対応を取るだろう。そうなったら、グローバル通商システムはさらに破壊されることになる。

 しかし、良い選択肢が失われれば、残るのは悪い選択肢だけだ。

 中国は貿易を不可能にしている。コモディティー(商品)や消費財以外はほかの国から一切買わないというのであれば、ほかの国々も同じことをする用意をせざるを得ない。

By Robin Harding
 
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