寺院収入の3つの要素
寺院収入は主に3つの要素から成り立っている。その3要素とは、墓地の管理費、葬儀の布施および法事・法要の布施である。
この他、一部寺院では収益事業や有料拝観、御朱印発行などを手がけている。例えば、浄土宗では収益事業を実施している割合は全体の23%ほどであり、拝観料に頼っている寺院は京都や鎌倉の観光地にある、ごく一部の寺院に限られる。
では、寺院は年間どれくらいの葬儀や法事を実施しているものなのか。
年間葬儀回数は一般的に檀家軒数の6%ほどと言われている。法事(回忌法要)の年間実施数は檀家数の3割ほどである。つまり、100軒の檀家を抱える寺院が1年間に執り行う葬儀はだいたい6件前後。法事の数は30回ほどとなる。
この寺院収入の目安をもとにして、コロナ後の寺院経済の回復、近年の死者数の増加(葬祭の実施数の増加)、コロナ禍後の葬祭関連支出の動向などを複合的に加味して、算出し直した。ここからは、もう少し詳細に見ていく。
まずは、死者数の観点からである。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、年間死亡数は2000年が約96万人、2010年で約120万人であったのに対し、2024年では約160万人と激増している。高齢化が続く現状を見れば、「人口は減り、死者は増える」という状態は2040年前後まで続くと見込まれている。
死亡数に、葬祭関連ビジネスは大きく影響する。
現在、葬祭ビジネス市場全体では、約1兆7273億円(2023年、矢野経済研究所)とみられている。うち、葬儀業の売上高(経産省「特定サービス産業動態統計調査」などによる)は、2000年には約2633億円だったが、2010年には約4988億円、2019年には約6001億円と右肩上がりである。先述のように死亡数が増えているからだ。
ただし、この10年ほどで「家族葬」「直葬」といった小規模葬儀が広まり、件数は増えても1件あたり単価がじわじわ下がる局面に入っている。
他方で、墓石や仏壇・仏具市場は、かなり厳しい状況にあるとみられる。