同盟国との絆よりも大国間との「ディール」を優先するトランプ氏
制裁を強める中国に対し、あくまでも冷静な対応に終始する高市政権。「保守」を鮮明にするだけに、中国にとっては逆風で焦りの感も否めない。
だが、日本の後ろ盾になるはずの同盟国・米トランプ政権の信用度も心もとない。現に11月10日、米FOXニュースのインタビューで、日本に対する中国の一連の強硬発言に対して問われたトランプ氏は、「同盟国の多くも友人ではなく、貿易で中国以上に私たちを利用してきた」とコメント。対日貿易赤字への不満をさらけ出した。
トランプ氏は10月30日、米中首脳会談に臨み、対中追加関税の引き下げと引き換えに、中国によるレアアース対米輸出規制の1年延期を“ディール(取引)”したと喧伝。
一方で懸案の台湾問題は一切議題に上らなかった様子で、「台湾を取引カードに使ったのではないか」との観測も飛び出した。もしかしたらトランプ氏と習氏との間で、「中国が台湾に対して軍事的圧力を加えても、アメリカは黙認する」という密約が結ばれたのではないか、との懸念だ。
11月2日の米CBSテレビのインタビューでは、米中首脳会談に関連し、台湾防衛のために米軍が介入するかと問われたトランプ氏は、「その時が来れば分かる。彼(習氏)は答えが分かっている」と曖昧なコメントにとどめた。
グラス駐日大使は11月21日、日本に対する中国の一連の“恫喝”に対し「中国の隣国の多くは、中国の友好的な顔よりも、いじめを行う顔をより多く見てきました。このような必要のない脅しは信頼を損ない、地域の安定を崩します」とコメントし、日本への支持を明らかにした。
だが、同盟国との絆よりも、大国間との「ディール」や金銭的な損得勘定、さらにはノーベル平和賞受賞を重視しているように感じられるトランプ氏が、極東情勢をどれだけ深刻に考えているかは不透明だ。
台湾とは一衣帯水の関係で、万が一中国が台湾に武力侵攻を考えた場合、在日米軍を奇襲し、日本もいや応なく有事に巻き込まれると考えるのが、軍事の常識だ。果たして中国は台湾への無謀な軍事侵攻にどこまで本気なのだろうか。
青森の三沢基地から出撃する米海軍のP-8哨戒機(写真:米空軍ウェブサイトより)








