水上艦艇や水上民兵が出撃すれば「米中全面衝突」の危険性も
さらに、潜水艦の動きを探る哨戒機の機数と技術力も米側が圧倒的に上で、P-8を主軸に約120機を保有する。
台湾はP-3Cを12機、日本もP-3C、国産のP-1の計約70機(アメリカに次ぎ世界2位)を保有するため、仮にそれぞれ半数を投入したとしても100機を超える相当な戦力となる。
台湾空軍(P-3C)の演習(2024年1月、写真:ロイター/アフロ)
ただし日本の哨戒機はあくまでも「通常のパトロール活動」との名目で、台湾東海岸の領海ぎりぎりの海域を飛行し、中国潜水艦の動きを探知したら米側と情報共有するにとどめるかもしれない。
海上自衛隊のP-3C哨戒機(写真:海上自衛隊ホームページより)
海上自衛隊の国産P-1哨戒機。P-3Cの後継機(写真:海上自衛隊ホームページより)
対する中国は国産のY-9を25~50機配備すると見られるが、日米に比べて性能的にも対潜作戦の技量も数段劣ると見られる。また、Y-9の半数はやはり本土の沿岸や南シナ海のパトロールに回され、残る機数も台湾の西海岸、つまり台湾海峡周辺での活動に制限されるだろう。
2025年9月3日、中国北京で行われた第2次世界大戦終結80周年記念軍事パレードで、天安門広場上空を飛行するY9哨戒機(写真:ロイター/アフロ)
台湾の東海岸(太平洋側)は、米海軍の空母艦隊(空母打撃群)が複数展開し、艦上戦闘機や早期警戒機で半径1000km規模の空域を警戒する。開戦となれば中国機は真っ先に妨害・撃墜される危険性が高い。
中国は多数の水上艦艇や海上民兵と呼ばれる、漁船などに武装を施した無数の中小船舶を出陣させ、海峡などに集結して民間貨物船の航路を妨害することも考えられる。だが1、2カ月の短期間ならともかく、半年から1年以上の任務となった場合は、ローテーションや人員の疲労、補給の面で苦戦を強いられることは間違いない。
また、水上艦艇や水上民兵が出撃した場合、米艦艇と衝突して米中の全面衝突へと発展する危険性も少なくないため、さすがの中国も躊躇するのではないだろうか。
台湾有事に備え、市街地に立て籠もる中国軍特殊部隊の掃討訓練を行う台湾陸軍部隊(写真:台湾陸軍ウェブサイトより)