需要が増えると、富裕層が得をする理由

 コスト増を理由に、コスト以上の値上げをした企業の売り上げが伸びて、様々な業種で最高益の文字が踊る。利益が上がれば株価が上がりやすくなる。ここまでは自然な流れである。

 しかし、株価の上昇で最も恩恵を受けるのは、株式を多く人たち、つまり富裕層である。

 低所得者層は株をほとんど持たない。例えば、資産に占める現金の比率が、ある低所得者と高所得者で同じだったとしよう。株価が10%上がった時に、100万円相当の株を持っている低所得者と、1億円相当の株を持っている高所得者では、まったく儲かる度合いが違う。

 そのため、有利なのは高所得または資産が潤沢にある人々であるが、これらのグループに属する人は若者には少ない。つまり、インフレによる金融資産経路の恩恵を受けづらいのは、そもそもの金融資産が少ない低所得者層と若者だ。

 さらに、低所得者層は必需品への支出割合が高く、食料、光熱費、家賃といったインフレの影響を強く受ける品目に多くのお金を払わざるを得ない。節約の余地も限られており、インフレが生活に直撃しやすい。

 つまり、需要喚起型の政策は

・負担は庶民へ集中し
・恩恵は富裕層へ集中する

 という「二重の格差構造」をつくりやすい。