ところが、先月の「4中全会」で見られたのは、元の習近平政治である「緊」に回帰していく流れだった。再び潮目が変わったのである。

 例えば、今月5日から10日まで、上海で8回目の「進博会」(ジンボーフイ=中国国際輸入博覧会)が開かれた。これは、「中国は輸出ばかりしている」という海外の非難をかわすため、習近平主席の肝煎りで、2018年に始めた毎年11月に行う国家級のイベントだ。

 1回目と2回目は習主席が上海に赴き、「中国は輸入大国を目指す」という基調演説をぶった。以後はコロナ禍に入ったため、オンラインでスピーチした。

 しかしながら、昨年の第7回から、ナンバー2の李強首相に任せて参加しなくなった。今年は完全無視だった。その間、海南島の軍事基地で3隻目となる空母「福建」に乗り込んだり、広州で国威発揚のための「国体」(中華人民共和国第15回運動会)に出席したりしているのだ。

細る中国とのパイプ

 こうした流れを見ると、単に高市首相の「存立危機事態」発言を巡るやりとりというより、もっと深いところで日中関係の悪化が懸念されるのである。

 折しも同盟国のアメリカは、10月30日の米中首脳会談後に、「台湾の話はしていない」などと嘯(うそぶ)く無責任極まりない大統領が統治している。

 高市政権には、これまで中国とのパイプ役だった森山裕幹事長も、公明党もいない。中国問題がアキレス腱とならぬよう要警戒である。