外交部の報道官が、これだけ長々と日本政府を批判するのは、久方ぶりのことだ。日本の政権が、中国に比較的融和的だった石破茂内閣から、強硬な高市早苗内閣に変わったため、一発威嚇しておこうという意図もあったろう。
だがそれと同時に、「中国自身の変化」も感じたのだ。その背景にあるのは、先月20日から23日まで開かれた中国共産党の年に一度の重要会議「4中全会」(中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議)である。
習近平主席の外交スタンスが変化
中国政治というのは基本的に、「緊」(ジン)と「松」(ソン)という逆方向に向くベクトルの引っ張り合いで成り立っている。前者は、社会を引き締めて安全な社会主義体制を構築すること。後者は、社会を緩めて市場経済による発展を促していくことである。
習近平総書記は、基本的に「緊」の側に立つリーダーである。実際、13年前に共産党トップに就いて以来、そうした路線を貫いてきた。
ところが中国経済の失速が、いかんともしがたいところまで来た。それで私が見るに、昨年3月の全国人民代表大会(国会)を契機として、「松」に方向転換を図った。
今年1月に太平洋の向こう側でドナルド・トランプ大統領が就任し、関税を振りかざすようになると、その対策のため、4月8日と9日に「中央周辺工作会議」を開いた。それまでの「戦狼(せんろう)外交」(狼のように戦う外交)を捨てて、「周辺諸国との友好を図れ!」と、習近平主席が号令をかけたのだ。その影響で、対日外交も「松」に転じた。