またその翌月には香港情勢などに詳しい東京大学の阿古智子教授のテレビでの評論について、「中国のことに全く無知ながら学者風の顔をして、新疆・香港・チベット等について嘘・デマ・憎悪をテレビなどを通じて大量販買(ママ)して、日本の中国ウォッチングを濁している巨悪知識人の一人」と槍玉にあげ、選挙で選ばれた政治家や、有識者らを名指ししての個人攻撃発信も常態化させていた。
有識者のテレビでの発言もチェック、たびたび激しい言葉で非難してきた
党中央部に向けてのアピールとの見方も
しかし、当の薛剣氏は今年6月、ナチスドイツとイスラエルを同列に表現した自身のX投稿に、ジョージ・グラス駐日米国大使が「戦狼外交官というより、躾がなっていない子犬だ」とXに反論投稿した際には、「卑怯な個人攻撃をしてきた御自身は何処の『子犬』なのか」と再反論。ネット民からは「いったいどの口が言うのか」などと呆れられたこともある。
ジョージ・グラス駐日米国大使に批判されると、すぐさま再反論。なかなか好戦的である
こうした経緯もあり、一連の過激発信は識者らからは次第に相手にされず、中国ウォッチャーらからも「一種の芸風」「引用投稿も総領事館内で書いているマッチ・ポンプではないか」と面白半分に観測されてきたのが実態だ。
しかし、ここへきてまさかの「任国首脳殺害予告」が飛び出した。さすがに看過するわけにはいかないが、今回の発言の背景については「人事の季節」に絡む総領事館内部の「問題の表面化」ではないか、との観測も飛び交っている。
筆者がこれまでの記事で明らかにしてきたように中国の駐大阪総領事館は、過去に総領事が一時帰国中に「事故死」したことをはじめ、着任後わずか数か月で行方不明になるなどしてきた問題の多い任地であり、事実、薛剣氏のSNS上の過激投稿に関しても、「人事に厳しい習近平指導部に向けた対日言論戦の懸命な“実績づくり”」と目されてきた。
中国は概して米中対立が激化すると、日本を味方につけようと対日姿勢を軟化させるが、薛剣氏の過激ツイートもこれに呼応するかのように、対日攻撃は強まったり弱まったりしてきたため、むしろ日本社会よりも本国向けの計算ずくの発信ではないか、というわけだ。