その一方で、同じ9日にはこの騒ぎを打ち消すかのように「台湾有事は中国の内政問題」だとする発信を引用して、「全く仰る通り、『台湾有事は日本有事』は日本の一部の頭の悪い政治屋が選ぼうとする死の道だ」などと発信し、自身の発Xアカウントのトップに常時掲げられる「固定」に設定している。

「『台湾有事は日本有事』は日本の一部の頭の悪い政治屋が選ぼうとする死の道だ」などとする薛剣氏のポスト

 高市首相のほうは、週明け10日の衆院予算委員会で、7日の答弁について再度問われた際、「政府の従来の見解に沿ったものなので、特に撤回、取り消しをするつもりはない」としつつも、「今後、反省点としては、特定のケースを想定したことについて、この場で明言することは慎もうと思っている。今後は慎む」と述べ、この問題に関してこれ以上議論をヒートアップさせるつもりがない姿勢を示した。

 それにしても薛剣総領事の今回の「首脳殺害予告」は明らかに行き過ぎだ。これに関して「うっかり手が滑ったのでは」との見方もあるが、果たしてどうだろうか。

Xで日常的に強硬発言

 薛剣氏といえば2021年6月末に駐大阪総領事として着任。その直後の8月、米軍のアフガニスタン撤退を揶揄した人命軽視の過激発信を皮切りに、国際人権団体の香港オフィス閉鎖発表に「害虫駆除!!!」などと暴言を繰り返してきた名うての“戦狼外交官”。「戦狼」とは中国版「ランボー」を意味する。

 台湾海峡を巡る両岸問題では、同年10月に「台湾独立=戦争。はっきり言っておく!中国には妥協の余地ゼロ!!!」などと発信。その後ノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマ14世についても「平和解放以前のチベット最大の農奴王」とかみつき、特に両岸関係や香港、チベットの自由などの問題に触れる言動には過激に反応してきた。

 もちろん、日本の政治家や言論人にも激しく噛みついてきた。

 例えば麻生太郎氏が2023年8月に自民党副総裁として台湾を訪れ、フォーラムの席上、台湾海峡の安定のために、「今ほど日本、台湾、米国をはじめとした有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はない。戦う覚悟だ」などと語った際には、「台湾について妄言を吐いた麻生太郎氏」とのハッシュタグを付け、「日本の政治家は台湾で『戦う覚悟』を強調し、台湾海峡を混乱させ、台湾の人々を危険の中に陥れようとしている。中国はもはや1985年(ママ。正しくは1895年)に下関条約を結んだ清国ではない」と、西暦を誤記したまま批判投稿。

麻生太郎元首相の発言にも遠慮なく噛みつく