まさしく「ロイヤルファミリー」の偉業

 芝のレースの最高峰がパリの凱旋門賞なら、ダートレースの金字塔が米国「ブリーダーズカップ・クラシック」といっていいでしょう。1着賞金の額も今や世界一となりました。

 日本ではダートといえば浦和、船橋、大井、川崎、笠松、名古屋、河内、佐賀等の公営競馬のイメージが強く、こうした地方競馬場には一部を除き芝コースがありません。

 JRAが主催する東京競馬場や中山競馬場、京都競馬場、阪神競馬場等では、芝コースが外側に設置され、ダートコースは内側に造られています。米国カリフォルニア州デルマー競馬場のダートコースは外側にあることからも、米国ではダートレースが主役であることがわかります。

 日本ではダービーをはじめとするクラシックレースがすべて芝コースで行われるため、ダートのレースは格下のように思われていましたが、1998年に「フェブラリーステークス」がG1レースに格上げされてから、ダートレースにも注目が集まるようになります。

 同レースは2007年に国際G1に格付け、2016年には「ブリーダーズカップ・チャレンジ」指定競争とされ、勝利した馬には前記の米国競馬の祭典ブリーダーズカップへの優先出走権が与えられます。しかし、優勝馬以外の馬の米国遠征はあっても、「フェブラリーステークス」の優勝馬が遠征したケースはまだありません。

 フォーエバーヤングの馬主、藤田晋氏(サイバーエージェント代表取締役)は馬名の由来を自らが原案を務めたドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ』(AbemaTV配信)の主題歌、AK-69の『Forever Young feat.UVERworld』からだと語っています。

 同馬の生産者は前述した社台グループのノーザンファーム、調教師はJRAきっての国際派・矢作芳人、騎手は矢作師の秘蔵っ子、28歳の坂井瑠星──馬主、生産者、調教師、騎手、現役でありながら伝説となった名馬。

 前述のテレビ番組『ザ・ロイヤルファミリー』のロイヤルは、「高貴な、王家の、最高の」を意味する「royal」のことでしょうが、日本語のロイヤルには「忠誠な、誠実な」を意味する「loyal」も該当します。

 フォーエバーヤングを栄光へと導いた布陣は、最高の仲間たちであり、忠実で誠実な「ロイヤルファミリー」だったからこその偉業達成だったはずです。日本調教馬としての一大壮挙は同馬引退後もきっと末永く、フォーエバーに伝えられていくことでしょう。

 なお、今回のブリーダーズカップにはフォーエバーヤングを含め6レースに7頭の日本馬が出走しましたが、残念ながら勝利したのはフォーエバーヤングのみでした。

(編集協力:春燈社 小西眞由美)