「ブリーダーズカップ・クラシック」初制覇への道のり
競馬ファンの方はご存知のことですが、「ブリーダーズカップ」という名称はひとつのレース名ではなく、毎年米国で開催される「競馬の祭典」のことです。
今から半世紀ほど前の1970年代、ケンタッキーダービーなどで知られる米国競馬界では人気の低迷が続いていました。その人気を盛り返すため、高額の賞金をアピールした競馬の祭典を創設、準備期間を経て1984年11月にスタートします。
ちなみに引退後、種牡馬として日本に輸入され、今ある日本競馬の礎を築いたサンデーサイレンスが米国三冠馬となったのが1989年で、当時はちょうど米国競馬界の再興期にあたります。そのサンデーサイレンスのひ孫になるのがフォーエバーヤングです。
この祭典の創設当初、多額の賞金は種牡馬の生産者(ブリーダーズ)から出されていたことから「ブリーダーズカップ」と称されることになりました。今年(2025年)の場合、2日間にわたり22レースが行われましたが、そのうち14レースがG1レースという豪華さです。その中でも特に注目されるのが3歳以上の馬で争われる「ブリーダーズカップ・クラシック」というわけです。
今年の「ブリーダーズカップ・クラシック」は2日目の第9レース、ダート2000メートルの9頭立てで行われましたが、優勝馬が獲得する364万ドル(約5億6000万円)という高額賞金は、当然のことながらこの2日間の全レースの中で飛び抜けています。
優勝馬フォーエバーヤングの戦績は全13戦10勝、3着3回という内容で、3回の敗戦は昨年のケンタッキーダービー(1着との差、首)、ブリーダーズカップ・クラシック(同2&3/4馬身)、今年のドバイワールドカップ(同2馬身)というものでした。同馬のこれまでの卓越した実績からして、今回の偉業を予測する競馬ファンも少なからずいたことでしょう。
この「ブリーダーズカップ・クラシック」には、1996年にタイキブリザードが日本馬として初めて挑戦、13頭立ての最下位に終わっています。1着馬からは26&3/4馬身離されての大惨敗でした。このレースの4か月前、同馬は日本でのG1レース安田記念で鼻差の2着、日本を代表する1頭として意気揚々と米国に向かいましたが、不慣れな米国ダートコースだったことを差し引いても、この惨敗に騎乗した岡部幸雄騎手は彼我との力の差を痛感したことと思います。
綾小路きみまろではありませんが、あれから29年、それまでこのレースに挑んだタイキブリザードから始まる6頭の馬たち積年の思いをフォーエバーヤングが晴らしてくれたことになります。