1人は仕事のペースを緩め、もう1人は離婚を選択した
矢野:本書では、自身の養育環境が原因で愛着形成に問題を抱えた女性の例を2つ紹介しました。両者ともに子育てでつまずき、1人は仕事のペースを緩め、もう1人は離婚を選択します。女性がそのような思い切った決断・行動をしなければいけない、何かを諦めなければ連鎖が止まらないという点は考えどころだと思っています。
──男性側は何も変わっていない、変わらなくてもいいということを示唆しているということですね。
矢野:そうです。今回、執筆を進めていて、自分自身にも刺さるものが多々ありました。「男性はいったい何をやっているのだ」「女性にいろいろなものを押し付けているのではないか」ということを、書きながら自問自答していました。
──読者へのメッセージをお願いします。
矢野:少子高齢化により、今の子どもたちは大人になったときに、膨大な数の高齢者を支えなければなりません。そのような中で生きていくため、私たちがしたこともない、しなくてもよかった苦労を強いられると思います。私たち大人は、現代の子どもたちの、将来的な負担になるかもしれないのです。

子どもは未来であり、たくましく成長していってほしいと私は考えています。
ネオ・ネグレクトという現象は、子どもたちにとって明らかに負の側面を有しています。まずは、保護者の方々にネオ・ネグレクトを知ってもらうこと。そして、自覚してもらうこと。これが大切だと私は思っています。
自分はネオ・ネグレクト傾向があるのではないかと考える。あるいは、自分の周辺にそれらしき傾向のある人がいないか考える。もしいるのであれば声掛けをしてみる。
個人個人のそのような行いが積み重なっていくことでネオ・ネグレクトが減っていくことを願っていますし、本書をきっかけに生産性のある議論が生まれることを期待します。
矢野 耕平(やの・こうへい)
中学受験指導スタジオキャンパス代表
1973年、東京都生まれ。2025年で塾講師32年目。国語と社会を担当している。中学受験、中高一貫校、国語教育などをテーマにした書籍をこれまでに18冊執筆。また、オンラインメディア記事を350本以上執筆、配信している。
関 瑶子(せき・ようこ)
早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。YouTubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。
