子どもたちが手作りで「ドーナツ屋さんごっこ」をする様子(「2050年の保育」より)
子どもの成長にはどんな教育が適しているのか。多くの親はこの問いに直面し、試行錯誤を重ねながら子どもたちと日々向き合っている。
近年の研究では、「効果的な幼児教育」において大切なのは、「早さ」や「長さ」以上に、「質の高さ」だという。
今回は、19歳で保育園を起業した菊地翔豊が刊行した話題の新刊『2050年の保育 子どもの主体性を育てる実践的アプローチ』から、子どもの能力を最大限に引き出すための教育のあり方を紹介する。
いつ、どのくらい、どんな教育が未来への「最良の投資」になるのか?
「子どもの将来のためになる教育とはどんなものだろうか」
多くの親、そして保育者もまた、日々この問いと向き合っています。よく、教育は未来への投資と言われますが、その「リターン」を最大化する鍵はどこにあるのでしょう。
「2050年の保育」を論じる本書において、何が子どものためになるのか、そこにある根拠とはどんなものなのか、という視点は欠かせません。
そこでこの章では、「効果的な幼児教育」のエビデンスについて記していきます。
1.教育は「早く」「長く」するべきか?
「(学びは)早くから始めた方がいいの?」または「長く通わせれば安心?」親や保育者であれば、誰もが一度は抱く疑問でしょう。
経済や社会に関する統計データを調査、公開している国際機関・OECD(経済協力開発機構)によると、就学前教育を1年以上受けた子どもの「読解力」は、そうでない子より学校教育1年分も高いことを示しています。
また、質の高い就学前教育を2〜3年受けた子どもは、10年以上経っても良い成績を維持しているとしたイギリスの調査結果もとても支持されています。
では「長く通わせれば安心」という点についてはどうでしょうか。OECDが行った別の分析では、興味深い注意点が示されています。
それは、ただ長ければ良いというわけではなく、幼児教育への参加期間と将来の学力との間には、ある一定のラインを超えると効果の伸びが緩やかになる、あるいは頭打ちになる可能性が見られるというのです。
このことは、単なる「期間の長さ」以上に、その期間の中で「どのような経験をするか」が、子どもの未来にとってより重要であることを教えてくれます。
