今、保育や教育の現場では子どもの「主体性」を育てることが強く求められている。
では、その「主体性」はどうすれば引き出せるのか。今回は、8月27日(水)発売予定の『2050年の保育 子どもの主体性を育てる実践的アプローチ』より、「主体性」を育てるための科学的根拠を紹介していく。
写真:GettyImages
「主体性を育てる」は どうすれば実現するのか
近年、保育の現場では子どもたちの主体性を尊重することに重きを置いています。
背景にあるのは「自分の頭で考え、行動し、積極的に物事に取り組む」ことが、これからの時代に求められている資質である、ということが挙げられます。
エデュリーでも主体性を育むために、さまざまな仕組みを作っていますが、その肝になるのが、子どものやりたいという「好奇心」です。
特に子どもが何気なく発する「つぶやき」─ ─例えば「これやってみたい ! 」という一言は、豊かな学びの種が潜んでいるのです。
保育において、子どもの「やりたい」、興味関心といった「好奇心」(主体性を育むためにも)が重要である、ということは感覚的に納得いただけると思いますがそれは本当なのでしょうか?
ここでは子どもの「やりたい」という思いが成長発達に寄与するかどうかという点を、科学的エビデンスをもとに考えてみましょう。
心理学・教育学が示す「やりたい」の効用
子どもの「やりたい」という内発的な意欲は学習の強力な原動力となり、主体的に環境に働きかけて経験を積むことで発達が促されます。
心理学の研究では、子どもが自ら興味をもって取り組むときには、概念の理解が深く、記憶力は高まり、学業上の成果が向上することが示されています。
これは、子どもの「やりたい」という思いそのものが学びを促進するエンジンとなり得ることを示唆しています。
子どもたちの発する「やりたい」に敏感に応答する保育者は、環境を子どもの興味関心に合うようデザインします。
虫に興味を示す子がいれば、屋外で本物の虫と触れ合う機会を作り、観察や飼育を通して、その子の好きな虫の写真や虫眼鏡、図鑑を用意して虫コーナーができていく、といった具合です(具体的な事例や方法は本書第2部「2050年の保育 主体性を育む方法」をお読み下さい)。
こうして作られた、「子どもが自分の関心に基づいて自由に選択・没頭できる環境」は、子どもの自主性を尊重し、心理的欲求(自己決定感)を満たします。
実際、教育学のメタ分析でも「選択の機会」を与えることは子どもの内発的動機づけを高める効果があるとされています。
