解散総選挙と長期政権
仮に、今後、高市新政権が高い世論の支持を集めることに成功する場合、政局は大きく動く可能性が高まります。というのも、これまで劣勢を強いられてきた自民党にとって党勢を挽回する千載一遇のチャンスとなるからです。
先日の参院選では、自公の連立与党が大きく議席を減らしましたが、野党第一党の立憲民主は自民から離れた票の受け皿となることができず、「手取りを増やす」ことを訴えた国民民主や、外国人政策の見直しを掲げる参政党が広く支持を集める結果となりました(図表2)。そう考えると、高市新政権がこうした新興政党の主張とシンクロする目玉政策を携えて解散総選挙に打って出るなら、新興政党に大量に流出した保守票が還流することで、自民党が党勢を盛り返すシナリオが現実味を増してきそうです。

さらに、自民党にとって解散総選挙が好都合なのは、議員定数の削減が比例区を中心に行われる可能性が高いことです。現在の選挙制度は大政党に有利な小選挙区と中小政党に有利な比例区の組み合わせとなっていますが、このうち比例区の議席が大幅に削減されるようなら、自民党などの大政党に有利な制度変更となるからです(図表3)。

今後、臨時国会で議員定数是正の法改正が可決され、ガソリン減税を含む補正予算が通過し、さらに「移民の総量規制」を含む外国人政策などを掲げて連立与党が解散総選挙に打って出るなら、その勝率はがぜん高まるように思われます。
仮に、こうしたシナリオが実現するなら、高市新政権は株式市場が好感する経済政策を実行するだけでなく、選挙を通じて政権基盤を強化し、その強化された政治力をテコに更なる政策の実現に邁進することで、大方の予想を超えた「長期安定政権」となってもおかしくないでしょう。
こうして見ると、足元の日本株の再加速は、高市新総理の政策スタンスを映したシンプルな「高市トレード」の再燃というよりも、維新との化学反応により変異した「高市トレード2.0」とすることができるのではないでしょうか。
■まとめに
▶ 脆弱な政権基盤や公明の連立離脱などから一度は勢いを失いかけた「高市トレード」でしたが、維新の連立政権入りをきっかけにその勢いが再加速しています。
▶中でも、維新による要求を盾に議員定数を削減し、党内外の抵抗を抑え込んで世論の関心の高い政策を実現させていくなら、高市新政権への支持は大きく高まる可能性があります。
▶仮に、高市新政権が人気の政策を揃え、比例区の議員数を大幅に削減した上で解散総選挙に打って出るなら、その政権基盤は大きく強化される可能性があります。そして足元の株価の加速は、単なる積極財政策への期待に留まらず、長期安定政権の誕生を含む日本の政局の激変を示唆しているのかもしれません。
※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
※個別の金融商品や銘柄を勧めるものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。




