6.ウクライナによるロシア爆撃機破壊の影響
ロシアの爆撃機等がウクライナのFPV(First Person View=一人称視点 )ドローンで攻撃され約40機が破壊された。
FPVドローンとは、操縦者がモニターやゴーグルを通して実際にドローンに搭乗して操縦しているかのように扱えるドローンのこと。
ロシアは、ドローン攻撃から爆撃機を守るために、爆撃機を極東方面に移動させた。
爆撃機をウクライナから遠く離れた地域に移動させたために、爆撃機を使った巡航ミサイル攻撃を頻繁にはできなくなり、その攻撃回数は減少した。
だが、ロシアは爆撃機からの攻撃回数減少を補完するために、地上発射の巡航ミサイル「イスカンデルK」の攻撃回数を増加させた。
イスカンデルK型は、弾道ミサイルのM型とは異なる巡航ミサイルである。移動発射装置は同じであるが、発射するミサイルは異なる(写真参照)。
ロシアは、巡航ミサイルの生産を続けているのだが、その発射を地上発射に切り替えているのである。
写真 左:イスカンデルミサイルM型 右:イスカンデルミサイルK型
出典:ロシア国防省
7.ほとんど使用されなくなったミサイル
ウクライナ侵攻当初に、ロシアがミサイル攻撃を実施した時、ウクライナに大きく地中深くまであるミサイル攻撃痕ができていたことがあった。
これは、Tu-22爆撃機搭載の1トンの弾頭を持つミサイルKh-22キッチンであった。
ロシアが撃ち込むミサイルの弾頭重量は、このミサイルを除けば、すべて500キロ以下である。
1トンと500キロとでは、弾痕の大きさがかなり違うのである。
このミサイルは、飛翔速度が速くマッハ3.5~4.6であり、ウクライナが撃墜したという情報を見たことがない。
そのため、ウクライナとしては極めて厄介なミサイルなのである。
だが、最近は、このミサイル発射は年に1発、2発あるいは数発だけである。今年6月9日に2発発射されたが、目標に到達できずに途中で落下したと考えられている。
このほかに、対レーダーミサイル「Kh-31」クリプトンミサイルの射撃回数も極端に少なくなった。
ロシアは、欧米や日本からの経済制裁により、ミサイルの要求性能に見合う高性能な部品を入手できないために製造できないのであろう。
ミサイル部品の輸出規制が効果を発揮していると考えられる。