「AIエージェント」に関する経営コンサルタント・小林啓倫さんの解説は、JBpressのYouTube公式チャンネル「INNOCHAN」で順次配信していきます。チャンネル登録をお願いします!
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生成AIが社会に急速に普及する中、「AIエージェント」が注目を集めています。2025年は「AIエージェント元年」とも言われますが、そもそもAIエージェントとは何でしょうか。「ChatGPT」など対話型チャットボットとの違いや誰でもできるビジネスでの活用方法を、先端テクノロジーが専門の経営コンサルタント・小林啓倫氏に聞きました。3回に分けてお届けします。

※JBpressのYouTube番組「JBpressナナメから聞く」の一部をまとめたものです。番組では、実際にAIエージェントを使った実演を交えてわかりやすく解説しています。詳しい内容はぜひYouTubeでご覧ください。

「AIエージェント」とは何か

——今年に入り「AIエージェント」という言葉を聞くようになりましたが、そもそも「AIエージェント」とは何でしょうか。

小林啓倫・経営コンサルタント(以下、敬称略):2025年が「AIエージェント」の元年とも言われており、今年に入りいよいよ注目が集まっています。一言で言うと「自律性の高いAI」ということですが、この「自律性」という部分が分かりづらく、少し混乱を招いているように感じます。

 一般的なAIチャットボットは、人間が質問するとその場でAIが回答を出すというシンプルな仕組みです。一方、AIエージェントではまず人間から指示が与えられ、そこから先はAIがある程度自主的に動きます。具体的には、AIエージェントは次のような手順で動きます。

①    指示:人間がエージェントに目的やタスクを指示
②    計画策定:エージェントが指示を達成するための手順を自ら計画
③    実行:エージェントが計画に従ってタスクを実行
④    報告:実行した結果をまとめて報告
⑤    回答:作成した報告を基に、人間に回答

 このうち、②の計画策定と③の実行部分は、従来のAIチャットボットにはないステップで、ここが「自律性」があると言われる所以(ゆえん)です。エージェント自身がどう動くかを考え、実際に動いて結果を出す点がチャットボットとの決定的な違いです。

——AIチャットボットも裏では②計画策定や③実行を行っているのではないのですか。

小林:AIチャットボットの場合は、基本的に「質問に答える」という1つのタスクしかできません。例えば買い物の手配や旅行の予約、メールの送信といった連続した動作は行えません。チャットボットは対話だけに機能が限定されたエージェントの一種だと考えても良いでしょう。

 実は「ChatGPT」や「Google Gemini」といった生成AIでも、リサーチ機能を持つAIエージェントの一種「Deep Research(ディープ・リサーチ)」というモードが公開されています。

 例えば、Geminiに「AIエージェントのレポートを作成してください」と指示して「Deep Research」モードで実行すると、まずレポート作成のための詳細な計画が表示され、実行してよいか尋ねられます。必要に応じてその計画を編集することも可能です。

 ChatGPTでも同様にDeep Research機能を選択できます。同じく「AIエージェントのレポートを作成してください」と指示すると、通常のモードではすぐに回答が出てきますが、Deep Research機能を使うと「もう少し詳しく教えてください」とレポートの用途や焦点を当てるトピックなどの追加の指示を求めてきます。

 ユーザーが要求を細かくすると、その情報を基にエージェントがリサーチの計画を立て、調査を実行してレポートを書き上げてくれるイメージです。

 Deep Researchを使わず通常モードで即座に回答が出てくるのは、LLM(大規模言語モデル)が開発段階で取り込んだ膨大なデータを頭の中に持っているような状態だからです。つまり、自分の内部知識だけで回答しているわけです。

 一方、Deep Researchモードのエージェントは回答を出す前に計画策定という段階が入るため、通常より時間がかかります。計画に沿って外部の情報収集や分析を行うため、回答までに時間がかかるのです。