米国生まれでも米国籍を放棄、韓国で入隊
もう一つの注目は、現サムスン電子会長・李在鎔(イ・ジェヨン)氏の長男、李智鎬(イ・ジホ)氏の決断だ。
彼は米国で生まれ、韓国と米国の二重国籍を有していたが、2025年9月、韓国海軍士官候補生として入隊を選び、米国籍を自ら放棄した。
韓国では兵役義務が極めて厳格であり、芸能人や財閥関係者の「兵役回避」は世論の集中砲火を浴びる。BTSの入隊問題が国を二分したことは記憶に新しい。
そうした中で、財閥の後継者が自ら米国国籍を放棄し、約39か月の軍服務に臨むという選択は、国民に鮮烈な印象を与えた。
通常の兵役(2020年6月2日以降の入営者から)は、基本の軍事訓練5週間を含め18か月だが、彼は将校として入隊するため通常より長い39か月となる。
メディアは一斉に「ノブレス・オブリージュの体現」と報じ、ネット上でも「特権階級の義務を果たす姿勢に敬意を表する」と称賛が広がった。
父・李在鎔氏も「社会の一員として責任を学んでほしい」と息子を送り出したとされる。
この出来事は、「富の継承」だけでなく、「社会的義務の継承」をも象徴していた。
韓国において財閥の存在が批判と羨望の両方を集める中、李智鎬氏の入隊は、サムスン家が社会的信頼を回復しようとする新しい試みとして受け止められている。
サムスン家の一族の中には、従来の「企業後継」とは異なる道を歩む者も現れている。
会長・李在鎔氏のいとこにあたるCJグループの李美敬(イ・ミギョン)氏は、かねてグループ関連の文化事業を支援してきた。
CJグループは韓流ドラマやK-POPの海外展開を支えるスポンサーとして知られており、今や「財閥とカルチャー」の関係は切っても切れない。