中国最大の11月11日の独身の日に次ぐ規模のECセールの日「618」に、荷物の配送先を確認する従業員(6月18日、写真:VCG/アフロ)
中国のEコマース(EC=電子商取引)市場が、新たな消耗戦の様相を呈している。
消費者が注文してから1時間以内に商品が届く「即時小売(インスタント・リテール)」――。
この急成長市場の覇権を巡り、①アリババ集団、②京東集団(JDドットコム)、そして③美団(メイトゥアン)、の大手3社が、9月にかけて巨額の資金を投じる激しい価格競争を繰り広げた。
その後約1カ月、一見すると市場は落ち着きを保っているものの、水面下では各社のしたたかな戦略と、市場の過熱を懸念する規制当局との緊張関係が続いている。
この競争の本質はどこにあり、何を意味するのか。来月に控える世界最大の商戦を前に、改めて考察する。
誰が、なぜ戦いを始めたのか
この競争の火蓋が切られたのは今年初め。フードデリバリー(出前)を中核事業としてきた美団が、取扱商品を日用品などへ拡大したことに、Eコマース大手の京東集団が強い危機感を抱いたことが発端だ。
京東は対抗措置として、美団の牙城であるフードデリバリー事業に参入。これを受け、フードデリバリーアプリ「餓了麼(ウーラマ)」を擁するアリババも追随し、同分野への投資を急拡大させた。
3社の狙いは明確だ。
それは、消費者の「今すぐ欲しい」というニーズに応える即時小売市場の主導権を握ることにある。
アリババのEコマース事業責任者である蒋凡(ジャン・フアン)氏が「今後3年で年間1兆元(約20兆円)の流通取引総額(GMV)増が見込める」と語るように、この市場は各社にとって次なる巨大な収益源と目されている。
この有望な市場で競合に後れを取るわけにはいかない。その一心で、各社は湯水のように資金を市場に注ぎ込んだ。